【続・灰色の記憶覚書(メモ)】
新作『かがみのかなたはたなかのなかに』の稽古がはじまった。2年前、「未来のおとなと、かつての子どもたちへ」と銘打って、新国立劇場の演劇部門としては初めての、子供にも開かれた作品にチャレンジしたときも、今作とまったく同じメンバーで臨んでいる。新国立で立ち上げるプロデュース公演としては異例なのではないだろうか。前作『音のいない世界で』は、もし音楽という概念が盗まれてしまったら世界はどうなってしまうのだろうというような「音」を主軸に置いたお話だった。
大人になっても恐怖
今回のモチーフは鏡。
私と鏡との関係は、映画『ポルターガイスト』を誤って見てしまったときにはじまったのではなかろうか。男が鏡を前に、皮膚の異変に気付き、触ってみると、どんどん顔の皮が剥がれていってしまうという恐ろしい場面に出くわし、途中で鑑賞を放棄したかったのだけれど、物語上さまざま解決していない中途でやめてしまっては、この恐怖から永久に脱することはできないと判断し、半泣きで最後まで見た、あの日である。かどうかは、実のところ定かでないのだけれど、ここまで鮮明に恐怖を記憶しているところをみると、そうであると言ってもよいのではないだろうか。