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動物園のライブラリーをつくる 幅允孝 (3/5ページ)

2015.7.7 15:30

リオープンに向けて準備が進む京都市動物園のライブラリー=2015年7月3日、京都市左京区(提供写真)

リオープンに向けて準備が進む京都市動物園のライブラリー=2015年7月3日、京都市左京区(提供写真)【拡大】

  • 【本の話をしよう】ブックディレクター、幅允孝(はば・よしたか)さん(山下亮一さん撮影、提供写真)

 例えば、いま本の世話をしている坂本英房さんも元は飼育係。現在の肩書は「種の保存展示課長」だけれど、獣医師の資格も持っている。そんな坂本さんと初めて会ったとき、彼がとても大事そうに1枚のふるーいパンフレットを持ってきて、丁寧に見せてくれたことを僕は忘れもしない。それは、開園直後の明治時代から保存してある園内案内図。いまは絶滅してしまったニホンカワウソを飼育していた話をしてくれた。そして、それを説明しているときの彼のうれしそうな顔といったら。

 飼育のプロがつくってきた本棚は、どうしても専門的になってしまう。古い資料も、難しそうな研究発表もじっくり向き合ってみれば読み応えは確かにあるのだが、ここはパブリックスペース。絵本や漫画、エッセーや写真集など、手に取りやすい内容の本を追加しなくてはいけない。

 一方で、今まで本を護ってきた飼育係の情熱も伝えたい。これまで集めた本をリスペクトしながら、一般来園者にとって親切でわかりやすい場所にもしたい。そのバランスを保つため、僕が頼りにしたのは、動物のプロが書く軽い読み物だった。例えば、動物行動学の第一人者だった日高敏隆のエッセー『人間はどこまで動物か』は、僕のような「動物素人」のこともイメージできているプロの仕事。手にとってみると専門分野の範疇(はんちゅう)におさまらない洒脱さと面白さがあり、だれが読んでもきっと響く部分がある(特にタヌキの子育てのエッセーはぜひ読んでみてほしい!)。こういった本を橋渡しにして、何とかわかりやすさと専門性の融合を目指したわけである。

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