【本の話をしよう】
「ヴァイブレータ」などの作品で知られる映画監督、廣木隆一さんが、『彼女の人生は間違いじゃない』で初めての小説に挑んだ。自身の故郷でもある“フクシマ”に生きる人々のいまを活写した。
「映画をやっていても変な夢を見ることはないんですが、執筆中はかなりうなされましたよ…」。ベテラン監督は苦笑する。「撮影だったら1日ごとに区切りがあるけれど、小説はずっと作品のことを考えていなければならない。役者もキャメラマンもいないので、ぜんぶ自分でやらなければいけないですしね」。それでも、小説を書きたかった。
震災後の感情 残したい
福島県郡山市出身。2011年、故郷を東日本大震災が襲った。「直後に福島県で撮影をして、その後宮城県にも行きました。そのときから自分が抱いていた感情を、残したかった。映画にはなりにくい企画だと思っていましたので、世に出すなら活字だろうと」