集団の危うさ映し出す
脚本と演出を担当する赤堀は自ら劇団を主宰、市井の人々の本音と機微を丁寧に描く、独特の世界観に定評がある。今回はベテランの北村、大倉、秋山から初舞台の吉高まで、個性的な俳優陣がそろう。それぞれが悩みや過去を背負いながら日常を重ねていく姿は、情けなくもおかしい。音楽は松田聖子から西田佐知子まで往年の歌謡曲が並ぶ。ダンサーが舞台を彩り、劇中でシェークスピア劇のせりふが披露されるなど盛りだくさんだ。
「闇鍋にいろいろぶち込んで、チョコレートまで入れた“ごった煮”。食べたことのない味で、食べてみるとおいしい。何だか分からないけれど懐かしい。笑って楽しめて、心を揺り動かすエンターテインメントにしたい」
現代社会への疑問や人生のあり方について「大きな伏線は語らずともある」と赤堀。登場する「狂ったような盆踊り」は一つのモチーフだ。国会周辺のデモに集まる人々や、スポーツの試合後などに都内の交差点で騒ぐ若者たちの姿からイメージを膨らませた。「人が集団となったときの無自覚、そこから生まれる狂気や正義などに怖さや疑問を感じることがある。集団に人々がのみ込まれそうになっていく」。その危うさを映し出したものという。