【国際情勢分析】
米国が南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で、イージス駆逐艦を中国が建設する人工島の12カイリ(約22キロ)内で航行させた「航行の自由作戦」に対し、台湾当局が明確な支持表明を避けている。馬英九政権下で接近が進んだ中国への配慮が主な理由だが、それに加えて台湾自身が中国同様、南シナ海全域の島嶼(とうしょ)の領有権を主張しているにもかかわらず、紛争当事者としての国際的な認知が広まらないことへのいらだちもありそうだ。
「親米」と「和陸」の間で
米海軍横須賀基地所属のイージス駆逐艦「ラッセン」がスプラトリー諸島のスービ(渚碧)礁やミスチーフ(美済)礁などの近くを航行した10月27日、台湾当局は公式の反応を示さなかった。わずかに外交部(外務省に相当)の王珮玲報道官が、問い合わせのあった報道機関にだけ声明文を配布。「各当事者とその他の関係国」に対し、「南シナ海の航行と飛行の自由の確保」と同時に、「地域の緊張を高める」行為を避けるよう呼びかけた。