パリの同時多発テロは郊外サンドニの「スタッド・ド・フランス」で始まった。
サッカーとラグビーのフランス代表チームのホーム競技場であるここではこの日、ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の王者ドイツ代表を迎えて親善試合が行われていた。
スタンドではオランド仏大統領とドイツのシュタインマイヤー外相が仲良く肩を並べて観戦していた。米CNNが中継していた映像にも、大きな爆発音が響いている。
選手らはさすがに一瞬、プレーを止めたが、すぐにボールは動き始めた。上空をヘリコプターが舞う中、サポーターも関心をゲームに戻し、フランス代表の2-0の快勝を喜んだ。
だが、試合終了直後、電光掲示板に「トラブル発生」と掲示されると、携帯電話やラジオでテロの情報を得た観客らは一斉にピッチを目指した。外よりも、スタンドよりも、ピッチ上が安全と判断したのだろう。瞬く間にピッチ上はなだれ込んだ観客で埋められた。