自主憲法制定を党是とする自民党の憲法改正議論が停滞しそうな雰囲気だ。憲法改正、それも戦争放棄と戦力の不保持を定めた9条の改正は安倍晋三首相の悲願でもあるが、議論そのものが参院選後に先送りされそうになっている。
参院選の争点化回避
先月29日、都内のホテルで行われた自民党の立党60年記念式典。国会議員や地方議員を前に演説した首相が語ったのは、第3次改造内閣で看板政策に掲げた「1億総活躍社会」の実現や来夏に控える参院選での勝利への意気込み。自民党の「一丁目一番地」ともいえる憲法改正には言及しなかった。
昭和35年の立党の際、党の政綱に「平和主義、民主主義および基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う」と高らかにうたった憲法改正に、あえて首相が触れなかったのは来夏の参院選で争点化するのを避けるためだろう。