千円札に描かれている細菌学者、野口英世(1876~1928年)の書簡や、死の直前の闘病記録など大量の史料がニューヨーク近郊のロックフェラー公文書センターに眠っている。米国に研究拠点を置いた野口が、最後に日本を訪れて今年で100年。東日本大震災を機に、出身地・福島と米国との絆を強める動きも目立つ。野口は今も、米国に息づいている。
遺体運んだ船荷文書
公文書センターはニューヨーク市から電車で50分。ロックフェラー医学研究所の研究員だった野口の史料は、7個の箱の中に収められていた。
研究の対象だった黄熱病にかかり、急死するまでの最後の10日間を関係者が克明に記録した報告書。感染対策のためひつぎに密閉された遺体を、アフリカから米国に運んだ際の船荷文書。ニューヨークにある墓地の設計図。
ほとんど知られていない貴重な史料だ。
出身地の福島県猪苗代町にある野口英世記念館学芸課の森田鉄平さんは「野口に関する英文の史料は、十分研究されていない。本格的に調べれば新たな一面が見えてくると思う」と語り、米国に残る史料の重要性を指摘する。