「彼ら」の歴史もある
「私たちが『歴史』という言葉を口にするとき、まず人間の歴史を頭に思い浮かべがちですが、野生動物たちにだって彼らなりの歴史があるわけですよね。私たちは野生動物の視点から歴史を語ってみたいと考えました。とはいうものの、そこに人間が不在かといえば、それは違います。昔は、現在よりもずっと緊密に野生動物と過ごしていた時期だってあるわけですからね。本作は、人間が野生動物の世界と関わる過程を絡めながら、野生動物の歴史をまとめたものと言い換えてもいいでしょう」。プロモーションで来日したクルーゾ監督は、SANKEI EXPRESSの取材に応じ、制作費40億円、完成までに4年を費やした映画化の意図を説明した。
では、具体的に、野生動物の歴史はどのように語られているのだろう。獰猛(どうもう)な性格を持ち、仲間との絆を大切にする習性を持つイヌ科の動物、オオカミを見てみよう。本作では、イヌとオオカミのしぐさを映像で比較したうえで、オオカミがイヌの起源であることを指摘。また、人間がオオカミを家族の一員として受け入れ、飼い慣らし、やがては番犬に仕立てることを覚えた結果、かつての天敵、ヒグマから容易に身を守ることができるようになった-との考察もなされている。