生の声すくい上げる
多くの監督によって繰り返し映画化されてきたアウシュビッツをどのように表現したかったのだろう。「アウシュビッツとは、文明社会が自らを破壊へと導いてしまう一つの象徴。だからさまざまに映画化されるのでしょうが、私には、その悲劇的なプロセスを映画がどれだけ伝えきれているだろうかという問題意識が常にありました。今までに作られた映画でも伝え切れていなかったのではないかと考えています。私たちの映画作りでは、1人の人間が極限状態に置かれたとき、何を思い、どういう行動をし、生きているのかと、当事者の生の声をすくい上げ、当時の様子をリアルな映像で再現することで、観客に感じ取ってもらおうとしたのです」