【本の話をしよう】
私は読み狂人。朝から晩まで読んで読んで読みまくった挙げ句読みに狂いて黄泉の凶刃に倒れたる者。そんな読み狂人の私は若い頃、パンクの群れに身を投じ、勉強ということをしなかったため無慙なまでに無学で文学史を知らない。だから誰かが、「第三の新人がね…」なんて言っても、咄嗟に頭に浮かぶのは、第三のビールか石松金比羅代参くらいで、そんなことだから人にも侮られ、すれ違い様に腹を殴られたり罵声を浴びせかけられたり、と散々な目に遭って、いちおう抗議をするのだけれども、「文学史も知らぬ者が人並みのことを言うな」と一喝されてぐうの音も出ぬ始末。
こんなことでは出世はとうてい覚束ないので、そろそろなんとかせんといかぬ、と決意してとりあえず手に取り読んだのが、黒井千次選『「内向の世代」初期作品アンソロジー』で、この本には、後藤明生、黒井千次、阿部昭、坂上弘、古井由吉という、七十年代に登場した特徴的な新人の作家や批評家、これを称して、内向の世代、の代表的な五人の初期の作品が収められている。