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イナガキタルホが放つ都会の遊星的郷愁 いまこそ稲垣足穂の文芸的抽象力が求められている 松岡正剛 (1/5ページ)

2016.1.24 11:00

 【BOOKWARE】

 「いやあ、今夜もいい月が上がったねえ」「いえ旦那、あれはニッケル鍍金ですぜ」。これがタルホだ。「君は気体になろうとして、僕は結晶になろうとしている。二つを一つにするのがアブストラクションである」。これもタルホだ。「女性たちは時間とともに円熟する。しかし少年の命は夏の一日である。それは花前半日であり、その次はもう葉桜なのだ」。これもタルホなのである。

 稲垣足穂ほどオブジェ的な趣向に徹して、文芸の工芸細工化を試みた作家は、昭和にはいなかった。その趣向は少年期に見聞体験したものに発し、それを独自の文体で磨き上げて別物にまで高めていくところにあった。こうしてプロペラ飛行機、ボギー電車、六月の都会の夜、星の瞬き、天文学、水晶、弥勒菩薩、存在の裏地、半ズボン、パンツ、お尻、男色的スリル、サーカス、壊れた機械、ジオラマ、置き去りのオブジェ、能楽、薄明の妖精たちが、タルホ認定の工芸作品に仕上がっていった。

 ぼくは結婚式の夜に京都に入り、翌日は桃山のタルホの家で大笑いして、また東京に戻ってきた。それがぼくのムーンライト・ハネムーンだった。そのくらいタルホの一切合財が、ぼくの「存在の揺動」と「物質の将来」にとって重大事だったのである。

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