潮が砂浜に吹き上がり、その霧がかかったような空間を夕日が照らすイパネマの光景は、まさしく陰と陽が重なり合う瞬間といえよう。ビーチに規則正しく打ち寄せる大西洋の波音は、セピア色の思い出を演出するBGMとなる。
≪開発の影も笑顔で包む街≫
人口640万人。ブラジルの旧都、リオデジャネイロ。近年、国の成長に伴い急速に発展した街のひずみとゆがみは、リオのあちこちにある。
労働者や移民が自然保護地区を勝手に占拠し、所狭しと軒を連ねるように家が作られた「ファベーラ」(貧民街)。リオ市民の4人に1人が居住し、格差社会の象徴ともなっている。
麻薬販売組織の巣窟であり、地元の人々でさえ近づくことを怖がる。リオが世界有数の犯罪多発都市であるのも、このファベーラの問題を政府やブラジル社会が解決できないからだ。
開放的な美しい砂浜のすぐそばに、水質汚染が顕著な、閉鎖的なごみためのような川や湖が点在する。水辺に近付くと鼻をつまみたくなるような不快な臭いが漂う。五輪に訪れる観光客は、華やかなスポーツの祭典の影に、開発が生み出したリオの負の側面を目の当たりにすることだろう。