中学生の頃から一人で映画館に通い始め、初めて映画のヒロインの服装をまねるようになったキッカケがダイアン・キートン(70)だった。「アニー・ホール」(1977年、ウッディ・アレン監督)での彼女のファッションに魅了され、パンツルックにシャツとネクタイというマニッシュなファッションをまねたくてブティックを巡り、靴や帽子までそろえて母をあきれさせた。
あれから38年間、ダイアン・キートンへの憧れは褪(あ)せること無く今も続いている。主演・助演を問わず、彼女が出演する作品は全て見てきた大ファンとしては、名優、モーガン・フリーマン(78)と夫婦役というドリームキャストに期待が膨らみ、その期待は決して裏切られることはなかった。
心に染みる夫婦像
画家のアレックス(フリーマン)と妻のルース(キートン)は、ブルックリンを一望できるアパートの最上階に住んで40年になる。日当たりの良い窓からの眺め、屋上での家庭菜園の楽しみ、親切なご近所との関係など、暮らすには申し分のないアパートだが、仲のいい夫婦の唯一の悩みはエレベーターがないことだった。買い物に出るたびに5階まで階段で上がるのは、そろそろ老年に差し掛かろうとする夫婦だけではなく、10歳になる愛犬ドロシーにとっても不便極まりない状況だった。