午後4時、西の空に太陽が沈む時間を迎えても外気温は依然プラス表示だ。世界的に温暖な冬とされる今年、カナダ南東部に位置するトロントも、その例に漏れていないようだ。
例年、林立するビル群は雪に覆われ、昼夜を通してプラスに転じることのない凛(りん)とした空気感こそ、冬のトロントらしさであるというが、今年は雪どころか、日中は春を思わせる太陽の暖かみに半袖で街を歩く人さえ見かける。
そんなトロントにも、いつもの冬と変わらない風物詩がある。市庁舎前の屋外アイススケート場「Nathan Phillips Square(ネイサン・フィリップス・スクエア)」だ。毎年11月末から3月中旬まで、無料で開放されるスケートリンクだが、仕事帰りに一滑り、また友人同士のコミュニティーの場として多くの市民が集う。市内にはそんな屋外リンクが50以上も存在するというから、スケート愛は尋常ではない。
トロントに住んで20年がたつという取材コーディネーターを務める中村滋氏(55)はこう話す。