テレビのドキュメンタリー番組などで、アフリカやアマゾン流域の野生生物を見ていると、生き残るために周りの環境に溶け込むように身体を進化、つまり「擬態」させた生物を目にすることがある。文明という武器を手に入れた人間は、食物連鎖の頂点に位置するために天敵がいない。だから擬態する必要がない。強いて言うなら、人間の天敵は人間ではないだろうか。生き物たちのように生死には関わらないが、人間関係の難しさは誰もが悩むところだろう。
さて、私が海に魅了される理由の一つに生物の擬態がある。水中生物の擬態は陸上生物の比ではない。どうすればこんな模様、形、色に進化するのだろうと言うくらいまさに奇妙奇天烈だ。
中でも代表的な生物はウミウシで、数限りない種類が存在し、ウミウシ専用の分厚い図鑑も販売されている。海洋生物学者としても有名な昭和天皇も、研究のために甘辛く煮付けて召し上がったという逸話も残っている。