面白くも悲劇的
フロの目にはマルグリットがどんな人物に映ったのだろう。「純真で、ひねくれた人々に引き裂かれるのを待っているかのような無邪気な女性です。人物像が複雑なのはそれが理由なのです。マルグリット本人に自覚こそありませんが、彼女に関わることで周囲の人々は自分自身の嘘に向き合うことになります。作中、彼女を嘲笑したり、利用したりしたがる人々が出てきますが、最終的にそういった人々こそが最も彼女に心を動かされ、感動すら覚えてしまう。彼らは皆、コンサートの夜、マルグリットが本当に目的を果たせると信じるようになるのです」
ジャノリ監督の一ファンでもあり、一緒に映画を撮ることを強く望んでいたフロは撮影を終え、自分よりはるかに若い彼から改めて演出の奥深さを学んだそうだ。「グザヴィエは逆説を操る才能がある数少ない映画製作者の一人です。彼の映画は面白いのと同時に、悲劇的でもあり、それをそのまま主人公が体現しています。マルグリットは人々に囲まれながらもいつも孤独で、愛しているのに裏切られ、悲しみながらも生き生きとしていて、人の心を動かすけれど嘲笑を受けやすい。マルグリットの内面は登場した時と同じくらい純真ですか? 他の登場人物は見た目ほどひねくれているでしょうか? こういった複雑な曖昧さがこの映画を説得力のあるものにしているのです」。2月27日から東京・シネスイッチ銀座ほかで全国公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)