かやく豆腐でほっこり
まずは前菜。四角の皿に彩りよく盛られているのは大粒の丹波の黒豆おこわ、この時季ならではのイイダコと菜の花、鮎の稚魚である氷魚の釜揚げに自家製のからすみ。大ぶりのからすみを一口頬張れば、すっきりした日本酒が欲しくなる。
コースの半ばで提供されるのが蒸し物の「かやく豆腐」。なめらかに裏ごしした豆腐にヤマトイモ、キクラゲ、海老、小イモなどを混ぜ合わせて蒸し、黄金色に輝くあつあつのべっ甲あんがとろり。
べっ甲あんは色味の薄い銀あんと違って、濃厚な味わいの蒸し物と相性がいいという。しょうゆを多くしたつややかなあんとともに、さじで豆腐をすくえば、さまざまな食感が楽しめる。
「かやく豆腐は、寒さが残る春の季節までお昼のお弁当にもよく取り入れる定番です。具材はその日によって変わりますが、熱々の状態でお出しするのは変わりません。観光で冷えた体を、ほっこりと温めていただきたいですね」と市川さん。
なるべく京の地野菜と、近海で取れた魚介類を提供することにこだわっているという。市場には毎朝出向き、旬や走りの素材も取り入れながら、四季折々の食材を登場させている。