境内。小栗が愛したというツバキの花が咲く。住職の村上泰賢さん(74)が出迎えてくれた。幕末研究家。「小栗上野介~忘れられた悲劇の幕臣」(平凡社新書)を出版している。
新政府軍の命令で高崎藩などの一隊が寺に踏み込む。小栗捕縛。
「西軍は『反逆の意図明白なり』として断罪した。小栗様は精悍敏捷(せいかんびんしょう)。西軍にとって不気味な存在だったのでしょう。私たちは官軍とはいいません。官軍に対するのは、賊軍となる。おかしいでしょう」
小栗は取り調べもなく斬首された。首級は遠く離れた群馬県内の寺に埋められた。小栗を慕う村人がひそかに掘り出し、東善寺の裏山に埋葬したという。竹と杉の林。坂道を上っていく。墓前に立った。合掌。
最後に処刑の地へ。烏(からす)川の河原。近くに顕彰慰霊碑。強烈な文字。深々と刻まれていた。「偉人小栗上野介 罪なくして此所(ここ)に斬らる」。空は青く、風は冷たい。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。