「シリアからヨルダンに来て3年、もうこんな生活はうんざり。どうにかして生活を変えたいと思っているのに…」
マンスーラと名乗る女性は泣き出した。ヨルダン北部、シリアとの国境に近いイルビドという町で、シリア難民が身を寄せる住居を訪れた際の出来事だ。
床にはくたびれたじゅうたんが敷いてあったが、壁は冷えきっていて冷気が伝わってくる。部屋の真ん中には難民支援団体から支給されたという真新しいガスストーブが置いてあった。「寒いでしょうから、これで暖まって」。しきりにストーブのスイッチを入れようとするが、そのたびに丁重にお断りした。
平日の昼間、その家には彼女と2人の息子、義理の父、義理の妹がいた。マンスーラさんは文字を読むことができない。暦も理解できないから、子供たちの正確な年齢を知らない。見た目には2人とも10歳前後に見える。
ヨルダンに来る前、一家はヨルダン国境から10キロほど離れたダルアーというシリアの町に住んでいた。あるとき家に迫撃砲が撃ち込まれ、めちゃくちゃに破壊された。故郷を離れる決心を固め、身分証明証を探したが、がれきの山から取り出すことはできなかった。