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水族館生まれ シャチは不幸? 米シーワールド、繁殖・飼育中止

2016.3.19 00:00

米カリフォルニア州サンディエゴの「シーワールド」でのショーで観客に水しぶきを浴びせるシャチ(ロイター)

米カリフォルニア州サンディエゴの「シーワールド」でのショーで観客に水しぶきを浴びせるシャチ(ロイター)【拡大】

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 米カリフォルニア州サンディエゴなどにある世界的に有名な海洋テーマパーク「シーワールド」は17日、パークの目玉であるシャチの繁殖・飼育をやめると表明した。昨年11月にシャチのショーを2016年で中止すると発表していたが、飼育そのものを現在パークにいるシャチを最後とする。自然から引き離しショーで芸をさせる飼育環境への批判が高まり、来場者が激減しているため。シャチのほか、イルカやアシカといった海洋哺乳類でも、ショーや繁殖を中止する動きが世界的な潮流となる可能性があり、日本の水族館にも影響を与えそうだ。

 ■顧客離れ、ショーに続き

 「シャチに対する社会の認識が変わってきたのに伴い、シーワールドも変化する」

 運営会社のシーワールド・エンターテインメントのジョエル・マンビーCEO(最高経営責任者)は声明でこう語った。

 その上で、「シャチの問題は人々がシーワールドを避ける理由として日々大きくなっており、今回の決定はシャチと弊社と弊社の顧客にとって最善と考えている」と、顧客離れを理由に挙げた。

 米メディアによると、1964年に開業したシーワールドはサンディエゴのほか、テキサス州サンアントニオ、フロリダ州オーランドの3カ所にあり、巨大なシャチのショーが人気だった。現在は計29頭を飼育している。

 ショーについては2016年で中止し、19年までにより自然に近い環境の中で生態などが分かる「教育的な展示」に切り替える。さらにパークでの繁殖は現在妊娠している1頭を最後に行わない。捕獲された野生のシャチの購入は既にこの40年間行っておらず、将来的には飼育そのものをやめる。

 パークに対する批判が高まったのは、13年に公開された米ドキュメンタリー映画「ブラックフィッシュ」がきっかけ。オーランドのシーワールドにいる34歳の雄のシャチ、ティクリムが10年2月に女性飼育員を死なせるなど3人の命を奪った事件を取り上げたもの。海洋哺乳類の飼育やショーは動物と人間の双方を不幸にするとし、自然に帰すべきだと訴えた。

 英紙ガーディアン(電子版)によると、シーワールドでは開業以降、ショーの練習などが原因で200頭のシャチが死んだという。

 こうした事態を受け、動物保護団体などからの批判が噴出。その影響で、14年のシーワールド総入場者数は前年比17%も減少し、15年はさらに4%落ち込み、株価はこの3年で半値に暴落した。今回の決定を受け、株価は17日に前日比9.4%も急騰した。

 ■イルカやアシカも

 かねて人工飼育のストレスなどが、知能の高いとされる海洋哺乳類の生態に悪影響を及ぼすと指摘されてきた。米動物福祉協会の調査結果によると、人工飼育環境下にいるシャチの死ぬ確率は、野生で暮らすシャチの2.5倍に上るという。

 動物保護団体PETAのリサ・ランゲ氏は米メディアに対し、今回のシーワールドの決断を評価しながらも、「水槽を海の保護区域とつなげるべきだ。そうすれば、シャチは海流を感じられるより自然な環境で生活できる」と、さらなる改善を求めた。

 「水族館にいるイルカやアシカといった海洋哺乳類には行くべき場所がある」。シーワールドのマンビーCEOはこう語り、繁殖・飼育の中止がシャチ以外にも広がる可能性を指摘した。

 日本では昨年5月に、日本動物園水族館協会(JAZA)が世界動物園水族館協会(WAZA)の意向に従い、和歌山県太地町の「追い込み漁」で捕獲したイルカの購入中止を決定。加盟水族館は、イルカの繁殖に力を入れているだけに、今回の決定の影響は小さくない。

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