お勉強ではなく交流の場に
そこで、上から目線で情報を与えられる「お勉強」ではなく、対等な個人の「交流」の場を提供しようと考えた。腹を割って話をすることで、他者への理解を深めたり友情を生んだりできるのではないか。無知を源とする恐れや偏見を減らすことができるのではないか。初めて企画するワールドカフェには、そんな期待を込めた。
開催当日、会場となった日本財団ビルには、仕事帰りの若手サラリーマンや試験中の大学生らが訪れた。ゲストはフィリピン、ナイジェリア、エチオピア、インドネシア、インド、ブラジル、そして日本の元患者や家族。会場には飲み物や軽食を用意しており、到着したらコーヒーを片手に着席して、開始前の時間を使って近くの席の人とおしゃべりを始める人も見受けられた。
対話が始まると、参加者は議論に没頭した。ナイジェリアからのゲスト、アジボラさんのテーブルでも、「差別をなくすために必要なことは何か」など、参加者から次々と質問の手が挙がった。彼女は、両親がハンセン病の元患者で、ハンセン病患者・元患者らの人権を守る活動を行う国際組織「IDEA」のナイジェリア事務所で働いている。「スティグマ(社会的烙印)は、患者や元患者だけでなく、その家族にも押されている」と体験を基に指摘した上で、「ハンセン病に関するイメージを向上させることが必要。差別や偏見は、病気の原因や治療法の存在を知らないことから生まれている。教育や情報発信が大切だ」と訴えていた。