【Q&A】減反見直し TPP対応 大きな農家を集中支援

2013.10.28 10:30

 政府・与党がコメの生産調整(減反)と農家の経営所得安定対策を見直すことになりました。

 Q 減反とは

 A 農家が作るコメの量を抑えることです。1970年に始まりました。作りすぎを防ぎ、コメの値段が下がらないようにするのが狙いです。農林水産省が毎年、コメの翌年の目標数量を決め、農家は配分された枠に従って田植えをします。ことしの目標は全国で791万トンでした。コメ離れを反映し、目標は下がり続けています。

 Q 目標通りに作られるのですか

 A おおむね目標に沿って作られています。減反する農家は政府から補助金がもらえるので、ほとんどの農家が参加しているためです。補助金の根拠になる制度が経営所得安定対策で、減反と密接に関係します。このため、減反と経営対策の両方を見直すことになりました。

 Q どんな見直しになりそうですか

 A 減反に参加した農家を等しく守る制度から、小さい農家には補助金を出さず、大きな農家を集中的に支える政策に変わりそうです。林芳正農水相は「農家が自らの判断で需要に応じて生産できるような改革を進めたい」と話しています。大きな農家が枠にとらわれず、自由にコメを作ることができる仕組みも検討課題になるとみられます。

 Q なぜ大きい農家を支援するのですか

 A 大規模な方が農産物を作る費用が安くなり、収益力をアップできるからです。規模に関係なく農家を保護する政策を続けていては、やがて農業が崩壊するとの危機感が背景にあります。政府は都道府県ごとに新設する「農地中間管理機構」に、狭い農地を集めて、意欲ある農家や企業に貸し出す仲介役を担わせる計画です。新機構による農地集約と、減反や経営所得安定対策の見直しを一体として進め、農業の体質強化を目指します。

 Q 中小・零細農家への影響は

 A 政府・与党は見直しに合わせて新しい交付金「日本型直接支払い」の仕組みを導入して打撃を緩和することを検討しています。それでも受け取る支援金が減る農家などには、反発が残る可能性があります。

 Q 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉と関係はないのですか

 A 大いに関係します。日本を含む参加12カ国が、目標としている年内の交渉妥結を達成すれば、数年後には農産品の関税がなくなる見通しです。農業大国の米国やオーストラリア、カナダなどから安い農産品が大量に輸入されそうです。その前に、対抗できる態勢を整える必要があります。

 Q コメの関税は守られるのではないですか

 A 確かに政府はコメや麦など農産物の重要5項目の関税を守ることを最優先しています。ただ、5項目に含まれる586品目のうち、あられやせんべい、パスタなど223品目ある加工品・調製品の一部の関税撤廃は避けられそうにありません。政府はコメ農家だけでなく、麦などを作る農家向けの補助金の在り方も議論する方針です。

 ≪補助金対象 北海道10ヘクタール、その他は4ヘクタール以上≫

 政府・与党は、減反に参加する農家に支払う補助金の支給対象を、北海道で作付面積10ヘクタール以上、他の都府県では4ヘクタール以上に絞り込む検討に着手した。支援対象を大規模農家に限定して競争力を高める。作付面積当たりの補助金額を減らして総額を抑え、新たな交付金「日本型直接支払い」で中小・零細農家の農地の維持を支える。

 TPP交渉の進展を受けて農業強化が急務となる中で、減反の抜本見直しが不可欠だと判断した。だが、1970年の実施以来40年余りが経過した減反の大幅な見直しで生産現場に混乱が生じる恐れもある。

 政府などは、今回の見直しで意欲的な農家の規模拡大を促すとともに、山間地などの小規模生産者にも、作付面積などを基準に支払う交付金を新設し、地域が衰退するのを防ぎたい考え。政府・与党は、自民党が麦や大豆の農家の赤字を穴埋めするために2007年に導入した補助金制度を参考に、支援対象農家の絞り込みを進める方針だ。地域で共同して農業を営み、規模を拡大する「集落営農」は20ヘクタール以上が条件となる可能性がある。市町村が認めた場合に、基準を緩和する特例措置の導入も検討する。(SANKEI EXPRESS)

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