韓国「国民情緒法」は憲法より上

2013.12.2 14:15

 【安倍政権考】

 韓国司法のとどまるところをしらない「反日」ぶりに、安倍晋三首相(59)はさぞやるかたない思いだろう。伝えられているところでは、韓国司法は、国民感情に敏感だそうで、すなわち、国民に根強い反日感情があることを表している。ときどきの国民感情に司法判断が左右され、ひいては外交に影響を与えるようでは、良好な日韓関係構築の足かせになること請け合いである。

 反日を助長する不文律

 韓国には、法律や条約は言うに及ばず、その国の最高法規とされる憲法よりも上位に位置する「国民情緒法」なる法が厳然と存在しているとされる。

 韓国の日刊新聞として知られる中央日報で、2005年8月に掲載された「噴水台」というコラムにこうある。

 「韓国でこの罪刑法定主義を否定する『国民情緒法』という妙な論理が登場した。これは手につかめる実体も、文字で記録された文件(文献?)もない。長期にわたって蓄積された慣習法でもない。だが国民情緒に合うという条件さえ満たせば、実定法に拘束されない不文律となっている。憲法上にも君臨する」

 つまりは、韓国司法では、憲法や条約よりも国民感情が優先され、それを自虐的に「国民情緒法」と表現しているわけだ。「道理でな…」と合点がいくのは、このところの「反日」ぶりがやたら目につくからである。

 韓国の裁判所で11月1日、戦時中の徴用をめぐる判決があり、日本企業に損害賠償を命じた。言うまでもなく、1965年の日韓基本条約に伴い締結された請求権・経済協力協定では、慰安婦問題など両国間に横たわる賠償請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」としている。条約よりも「情緒法」が大切だから、こんな訳の分からない判決が出るのだろう。

 もっと言えば、盧武鉉政権が05年に慰安婦、被爆者、サハリン残留韓国人は請求権協定に含まれないとの見解を示した際、徴用工は協定に含むとしていた。この是非はともかくも、自国の政権がわずか8年前に示した見解をいとも簡単に脇に追いやるのだから、開いた口がふさがらない。

 年内にも大法院判決が出るとされ、よしんば訴えが認められれば、協定そのものが空文化するのは明らかだ。ましてや、どうしても埋めきれない日韓両国の溝が決定的となり、歩み寄りなど望むべくもない事態となる。

 韓国政府の足かせにも

 「反日」化の皮切りは、01年8月に憲法裁判所が出した慰安婦関連の判決で、韓国政府が慰安婦の賠償請求権に関し、解決に向けて努力しないのは違憲だとした。その後も腑に落ちない事例が相次ぐ。ソウル高裁は今年1月、靖国神社に放火した疑いのある中国人容疑者の身柄について、日本への引き渡しを拒否。日本側は、日韓犯罪人引き渡し条約に基づき、引き渡しを要請していたのに「政治犯」と認定し、中国に帰国させた。

 大田地裁も2月、長崎県対馬市の寺院から盗まれ、韓国で見つかった仏像について、両国が加盟しているユネスコ条約で盗難文化財の返還義務が規定されているのを知らないかのように、返還を当面差し止める仮処分を決定した。

 韓国は、三権分立がきちんと成立している先進国である。あらゆる司法の判断は、司法が独自にしたものであって、政治が関与したわけではあるまい。しかし、それは韓国政府の行動を縛ることになるのである。

 「韓国は自由や民主主義、基本的人権などの価値を共有する最も大切な国だ」

 安倍首相は(11月)14日、日韓間の交流活動を行う「韓日協力委員会」のメンバーが官邸に表敬に来た際、日韓関係の重要さを説いた。けれども、膠着(こうちゃく)状態に陥っている日韓関係に光明が差す気配はいささかもない。(松本浩史/SANKEI EXPRESS)

閉じる