「乗り鉄」 降りても楽しい お薦め 日帰り鉄道の旅

2014.1.30 16:20

 【大人の時間】

 ≪グルメ、絶景、見どころ満載≫

 のんびり旅を楽しみたいけれど、なかなか時間がない-。そんな忙しい毎日を送る人のために、首都圏・近畿圏から日帰りで行けるおすすめ鉄道旅を、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』などの著書がある旅行ライター、杉山淳一さん(46)に教えてもらった。新幹線や飛行機に乗らなくても、通勤列車の延長に旅はある!

 “乗り鉄”とは、鉄道ファンの中でも列車に乗ることを趣味とする人のこと。杉山さんは、小学生で目覚めて以来、約40年のキャリア(?)を持つ筋金入りの“乗り鉄”。2013年12月時点で、日本の全国鉄道網の約90%を踏破している鉄道旅のプロだ。「車窓からの景色はもちろんのこと、同じ車両に乗っている人を観察したり、旅の過程そのものを楽しめる」と鉄道旅の魅力を語る。そんな杉山さんに、日帰りで行くことができ、鉄道ファンならではの見どころがあるおすすめ路線をあげてもらった。

 工場の迫力、不思議な駅

 「第1鉄」は横浜市鶴見区の鶴見を起点とし、京浜工業地帯を抜けて川崎市に至る鶴見線。総延長わずか9.7キロのローカル線だが、東芝の工場の敷地内にあるため通行証がなければ改札の外に出られない終点の海芝浦(うみしばうら)駅(海芝浦行)や、海の上にあるかのような新芝浦駅など、鉄道ファンにはたまらないユニークな見どころが満載だ。杉山さんも「車窓からの工業地帯の風景も迫力満点。わざわざ遠くに行かなくても、すごく身近に旅情はあるのだと教えてくれた」と絶賛する。

 ボリューム満点ハンバーガー

 「第2鉄」は品川駅から京急線の「快特」に乗って、横須賀にボリューム満点のハンバーガーを食べに行こう。ここの“乗り鉄的見どころ”は、京急鶴見駅~子安駅間でのJR東海道線との併走。タイミングが合えば京急の電車が東海道線の列車を追い越すところが見られる。「僕は京急ファンなので、おもわず歓声をあげてしまいます」と杉山さん。

 横須賀では、0.5ポンド(約227グラム)の肉を使った「ヨコスカネイビーバーガー」や、「YOKOSUKA軍港めぐり」と名付けられた遊覧船で艦船を海から眺めるクルーズが楽しめる。

 なつかしい車両、うれしい味

 「第3鉄」はちょっと足を延ばして、静岡県富士市にあるローカル線、岳南鉄道へ。東海道本線の吉原駅から岳南江尾(がくなんえのお)駅までの9.2キロを結ぶ。オレンジの「7000形電車」は、京王井の頭線で使われていたものを改造した車両だ。「なつかしい車体に再会できるのも、地方の鉄道旅のうれしいところ」(杉山さん)。沿線にも、ご当地B級グルメ「つけナポリタン」(吉原本町駅)や、竹取物語の発祥の地とされる「竹採(たけとり)公園」(比奈(ひな)駅)などの見どころがある。岳南鉄道は1日フリー乗車券もあるので活用したい。

 ケーブル、リフトを乗り継いで

 関西からなら、いろんな乗り物に乗れる妙見参りはいかが。まずは川西能勢口(かわにしのせぐち)駅(兵庫県川西市)を起点とする能勢電鉄。阪急電鉄から譲渡された特徴的な色(マルーン色)の車両に乗って、終点の妙見口(みょうけんぐち)駅まで。徒歩で妙見ケーブル駅に向かい、ケーブルカーでケーブル山上に着いたら、お次は妙見リフト。「距離が600メートルあるので、ハンモックに揺られているかのようにゆったりとした時間を楽しめます」。リフトの終点から数分で、日蓮宗の名刹、能勢妙見山(のせみょうけんさん)に到着する。敷地内にある信徒会館の展望台は、晴れた日には淡路島や関西空港までを望むことができる絶景スポットだ。

 「鉄道を旅の目的とすれば、ほかの要素が残念でも悔しくない(笑)。鉄道はいつも私たちの生活とともにある。たとえそれが通勤電車でも、鉄道旅を始めたいなら、もうそこに入り口があるのです」と杉山さん。電車に乗れば、旅が始まる。週末が待ち遠しくなりそうだ。(文:塩塚夢/撮影:旅行ライター 杉山淳一/SANKEI EXPRESS)

 ■すぎやま・じゅんいち 1967年、東京都生まれ。都立日比谷高校、信州大学経済学部卒。PC系出版社を経てフリーライターに。著書に『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』、ゲーム『A列車で行こう』シリーズ公式ガイドブックなど。公式HPはsugisugi.net/

 【ガイド】

 杉山淳一さんの新刊『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。』(幻冬舎、1470円)。「限られた予算と時間で最高に楽しめる」をテーマに、ご近所鉄道からなつかしのローカル線、憧れの豪華寝台特急まで、日本全国の33のお薦め列車旅を紹介している。

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