男の見えや自尊心…心のバリアを脱ぐ ミュージカル「フル・モンティ」

2014.2.10 18:00

 フル・モンティは英の俗語で丸裸を意味する。本作で丸裸になるのは、失業中のさえない元鉄工所員たち。もう脱ぐべき身ぐるみもないくず鉄男たちが、一獲千金を狙って、ストリップショーの舞台に立つ。ミュージカル初挑戦の山田孝之(30)をはじめ個性の異なる6人が、それぞれ見事な脱ぎっぷりを見せる。

 脱ぐのは、シャツや下着だけではない。むしろ見どころとなるのは、男の見えや自尊心、あるいはコンプレックス…各自がそうした“心のバリア”を、徐々に脱いでいくシーンだ。

 特に、失業で養育費が払えずに愛息の親権喪失寸前のバツイチ男・ジェリーが、見せかけの男らしさをまだ脱ぎ切れない前半、山田は苦みばしった陰りを漂わせて深めていた。

 原作は1997年公開の英映画で、ミュージカル版の誕生は2000年の米国。今回、初の日本版で演出・翻訳・訳詞を手掛けた福田雄一(45)は、映画「俺はまだ本気出してないだけ」などの監督で、持ち前の笑いのセンスと、ばかばかしくもヒューマンな物語づくりにたけた手腕を、本作でも発揮。6人の鈍くさい生きざまを何ともいとおしく描く。キャッチーな楽曲、大団円での素人っぽいがきらきらと生気がみなぎるストリップシーンなど、福田が目指した「敷居を下げ、気楽に楽しめるミュージカルを」との試みは成功だ。東京国際フォーラムで2月16日まで。(津川綾子/SANKEI EXPRESS (動画))

閉じる