かすむパリ「自動車運転禁止」 大気汚染が危険水準 2日間規制

2014.3.18 00:03

 フランス政府は3月17日早朝から、首都パリで深刻化している大気汚染が危険水準に達したとして、パリとその近郊で20年ぶりとなる自動車の運転規制を開始した。期間は2日間。危機的な汚染は季節はずれの暖かさと晴天が1週間続いたことが原因で、先週末には地下鉄やバス、レンタル自転車を3日間無料にし、ドライバーに公共交通機関の利用を促す異例の措置を取ったが効果は出ず、追加措置に踏み切った。しかし自動車業界は「こんなことをしても効果はない」と反発している。

 フランス通信(AFP)や英紙デーリー・テレグラフ(電子版)などによると、今回の追加措置は自家用車と二輪車が対象で、これらのドライバーに対し、車両のナンバープレートが奇数なら奇数の日付、偶数なら偶数の日付だけ運転を認めるという内容。違反者には罰金22ユーロ(約3000円)が科される。

 ただし、電気自動車やハイブリッド車、タクシー、バス、緊急車両のほか、旅行で3人以上を乗せて走る自動車も、カーシェアリング奨励の意味から適用外となる。この規制によって車両の運行数を約半分程度に抑える効果が期待されるという。

 北京に匹敵

 17日の運転規制は午前5時半から開始。スモッグでもやがかかり視界が悪くなったパリとその近郊60カ所に配備された総勢700人の警察官が違反者をくまなくチェックした。

 フランスを悩ませる今回の大気汚染の原因は粒子状物質のPM10。1立方メートルの大気に80マイクログラム以上含んでいると、ぜんそくや心臓疾患につながるとされるが、(3月)14日にはこの警戒水準の2倍以上にあたる180マイクログラムを検出。風が弱く大気が滞留しやすい気候が数日続いていることから、多くの地域で汚染物質の濃度が警戒水準を上回った。

 フランスの環境機関は、今回の大気汚染は悪名高い北京の汚染状態に匹敵すると指摘。フィリプ・マルタン環境相(60)は16日の会見で「規制の主目的は市民の安全を確保するのが狙い」と訴えた。

 業界反発「効果ない」

 しかし、腹の虫が収まらないのが自動車業界だ。フランス自動車クラブ協会(ACA、会員76万人)のディディエ・ボレッカ会長は「性急で効果がなく、混乱につながる。この措置は過去、導入されたどの国でも効果を上げなかった」と非難。

 またドライバー協会「4000万人のドライバー」のピエール・シャッスレ会長も「ロビー活動によってこのひどい大気汚染の背後に自動車が関係していると人々が信じ込んだことに驚いている」と述べ「この措置は不公平というよりもっと悪く、ばかげている」と憤っている。(SANKEI EXPRESS)

 ■PM10とPM2.5 ともに大気汚染の原因となる微粒子物質。自動車や暖房器具、重工業の工場などから排出されたり、風で舞い上がった黄砂など土壌粒子などからなる。PM10は粒子径が10マイクログラム以下で、1立方メートルの大気に80マイクログラム以上含まれていると、ぜんそくや呼吸困難、心臓疾患などを引き起こすとされる。中国・北京の大気汚染で問題となっているPM2.5は粒子径が2.5マイクロメートル以下で微小粒子状物質とも呼ばれる。細かな粒子のため肺の奥深くに到達でき、がんの原因となるとされる。

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