TPP カナダで交渉官会合再開 年内合意か長期化か

2014.7.4 11:15

 日米など12カ国がカナダのオタワで開く環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉官会合が7月3日、初日を迎えた。12日までの期間中に事務レベルで残された難問を集中的に議論し、政治的な判断を仰ぐ閣僚会合の開催に道筋を付けることを目指す。

 3日は、貿易で取引される商品の産地がどこの国になるかのルールを決める「原産地規則」の作業部会を開催。5日からは事務協議を指揮する首席交渉官会合を開き、協議を本格化させる。日本は「聖域」と位置付けるコメや麦、牛・豚肉など重要農産物の関税維持方針への理解を求め、2国間協議を精力的に進める方針だ。

 鶴岡公二首席交渉官は3日、カナダへの出発前に羽田空港で記者団に「今回の会合は、TPPの最終段階に向けて非常に重要な機会」と述べた。会合では次回の閣僚会合の日程調整まで進めたいとの考えを示す一方、「今後の日程の議論に入る前に、相当、時間をかけた厳しい交渉が必要」とも話した。12カ国は新薬のデータ保護期間をめぐり日米や新興国の間で意見が分かれる知的財産や、新興国の抵抗が強い国有企業改革などの分野でもテーマごとに作業部会を開き、意見を擦り合わせていく見通しだ。

 ≪年内合意か長期化か 今秋ヤマ場≫

 カナダで交渉官会合を開くTPP交渉は、年内合意を目指して各国のせめぎ合いが続くが、対立が解消せずに長期化する恐れもある。11月には、交渉参加国の首脳が集まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議もあり、ヤマ場を迎えそうだ。今後のシナリオを予想した。

 (1)年内

 関係者の間では、交渉が最も円滑に進んだ場合、米中間選挙が終わった11月か12月に大筋合意に達するとの見方がある。まずは今回の交渉官会合で、知的財産などの難航分野を除いた分野が大きく進展することが前提だ。次回の事務レベル会合で難航分野に関しても政治判断できるまで論点を絞り込み、秋までに閣僚会合を開く。11月のAPEC首脳会議もにらみ、首脳が集まる機会を利用してTPP首脳会合を開き、一気に合意を目指すとの考え方だ。

 米やシンガポールなどは、こうした筋書きの実現に期待する。米と利害が対立する立場の国としては、米側から思い切った譲歩案が示されることが早期合意の条件となる。しかし、米が中間選挙戦で不利に働きかねないような譲歩をすることは「現実的にはあり得ない」(交渉関係者)と冷めた見方もある。

 (2)来春

 11月の米中間選挙後に事務レベルで譲歩案の策定に向けた具体的な動きが出始めれば、2国間での関税協議を含めた各分野の交渉が前進し、年明けに合意に向けた流れが加速する可能性がある。

 オーストラリアのアンドリュー・ロブ貿易・投資相が6月、TPP交渉の合意時期について「来年前半に好機がある」と述べるなど、交渉参加者からも目標時期になり得るとの見方が広がりつつある。

 ただ、日本にとって来年春は統一地方選の時期と重なる。農林水産業が盛んな地方では、TPP交渉の結果として、重要農産物の関税が大幅に引き下げられ安価な農産物が流入することへの警戒感が根強い。検討される譲歩案の中身によっては、地方選で与党側にとって逆風となる可能性もあり、政府は国内農家をどう説得するかをめぐり難しいかじ取りを迫られる。

 (3)漂流

 年末から年明けにかけても米の態度が軟化しない場合、参加各国で溝を埋める作業が困難との認識が広がる可能性がある。

 交渉は、各国が大胆な譲歩をしてでも早期妥結に向けて前進させるという機運がしぼみ、漂流することになりかねない。(共同/SANKEI EXPRESS)

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