人間関係を構築できない男の悲哀 映画「嗤う分身」 リチャード・アイオアディ監督に聞く

2014.11.7 15:10

 自分とうり二つの人間が目の前に現れて、しかも自分よりはるかに優秀な人物だったら…。英国の新鋭、リチャード・アイオアディ監督のSFスリラー「嗤う分身」は、ロシアの文豪、フョードル・ドストエフスキー(1821~81年)の小説「二重人格」の舞台を近未来に置き換えて脚色し、個が抹殺された無機質な世界観を構築してみせた。

 要領が悪く、内気で、うだつの上がらない青年サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)は会社でお荷物扱いだ。ある日、サイモンとそっくりな男(アイゼンバーグ)が「期待の新人」として入社してきた。

 コメディアンとしても活躍する監督はSANKEI EXPRESSの電話取材に、「自分の分身がみんなの前に現れたのに、あろうことか、誰も分身だと気づいてくれない。そんな原作の設定がユニークに思えました」と映画化の出発点を語った。また、プライドを傷つけられたサイモンにも言及し、「威厳だけを保って生きている感じが見ていて滑稽で、周囲と人間関係を構築できない男の悲哀」と指摘した。

 作中には「上を向いて歩こう」などの日本の昭和歌謡曲が挿入されている。メロディーに宿る独特な憂いは監督のお気に入りで、不条理に苦しむ主人公の演出にも効果的だったとか。11月8日から東京・シネマライズほかで公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS)

閉じる