【鎌倉海びより】静かに更けるLEDの夜

2014.12.24 16:30

 ノーベル賞にあやかろうというわけではないが、冬の鎌倉にはLEDのイルミネーションがよく似合う。昼間は観光客でにぎわう街中も、夜になるとぱたっと人通りが途絶え、商店も午後6時ごろにはシャッターを下ろしてしまう。その静寂ぶりが熱度の低い光とマッチするのでしょうね。

 海岸に近い由比ガ浜通りはかつて、鎌倉で最もにぎやかな商店街だったという。映画館などもあった。最近はどちらかというと時代に取り残されているような印象が強かったのだが、そのレトロ感覚が逆に魅力なのか、このところしゃれたお店が次々にオープンしている。

 長距離走で言えば、先頭集団がぐるっとトラックを一回りして追いついてしまったので、周回遅れで時代の最先端に躍り出てしまった。そんな感じだろうか(商店街の皆さん、ごめんなさい。でも、夜は本当に静かになります)。

 その由比ガ浜通りの六差路の複雑な交差点脇に安置されている六地蔵の背後にも、なんとチカチカのイルミネーションが飾られているではないか。古いようなモダンなような、不思議な空間…=写真。

 交差点の少し北のあたりは、中世に刑場があったという。六地蔵もその刑場で処刑された罪人を供養するために祀(まつ)られ、後に六地蔵交差点脇の現在地に移されたと伝えられている。事実関係としては、六体のお地蔵さんが移ってきたから、六地蔵という地名で呼ばれるようになったのだろう。

 現在の住居表示は由比ガ浜1丁目。それでも交差点やバス停には六地蔵の名が残っている。赤い前垂れをかけたお地蔵さんの前にはいつも季節の花が供えられ、道行く途中に立ち止まって一礼する人も少なくない。ミスマッチのチカチカLEDも地元に愛されている証拠である。(編集委員 宮田一雄/SANKEI EXPRESS)

閉じる