新しいものを受け入れる芯の強さ GLIM SPANKY

2015.2.18 13:40

 GLIM SPANKYは、ボーカルの松尾レミとギターの亀本寛貴によるロックユニットである。オールドロックの雰囲気と松尾のハスキーなボーカルに一聴してひきつけられる。その歌声はCMでジャニス・ジョップリンの「MOVE OVER」のカバーで起用されたのも納得だ。

 最新作はメジャー1stシングルとなる「褒めろよ」で、スピード感のあるアッパーなロックチューンである。プロデュースを椎名林檎やいきものがかりなどを手掛けた亀田誠治が、作詞はSuperflyの「愛をこめて花束を」にも参加している、いしわたり淳治と共作している。さらにはドラマの主題歌として書き下ろしたことも注目されている。

 インディーズ時代から比べると、今の2人を取り巻く環境は目を見張るものがある。しかし、話を聞くと、しっかりと現在の状況を受け止めながら次のレベルを目指す意識の高さ、芯の強さを感じた。

 外部と関わり成長

 松尾は「最初は少し違和感があって、自分の曲を歌うことや自分たちだけで作る曲にこだわりたいところもありましたが、もっと存在や器を大きくしていくことを考えたら、これらの経験を楽しむことが成長につながると考えました」と振り返る。作品に込めたメッセージについては「社会にいる嫌なやつを褒めまくって、持ち上げまくって、最終的に自分が強くなっていくというドラマの内容と、これからいろいろな困難を乗り越えていかなければいけないという自分たちの状況が重なって、ドラマのために書き始めたはずなのに、自分たちの背中を押す応援歌にもなりました」と語っている。

 ギターの亀本は「最初に2人で作ったデモが亀田誠治さんとのやりとりでどんどん良くなっていったんです。レコーディング、マスタリング、さらにはドラマなど、いろいろな外部の人と作り上げることで、どんどん曲が良い方向に向かっていくのがわかって、そんな制作過程の経験がすごく刺激になりました。自分たちの一皮むけたサウンド、世界観にたどり着いた実感があります」と語った。

 松尾は「外部の人と仕事をしても、自分たちの芯は揺るがない。それを証明し、確認するいいチャンスをもらったと思っています。できあがった作品を改めて聴いて、こうありたいと思う自分にしっかりなっている、と実感できたのがすごく良かったです」と振り返る。

 柔軟に新しい経験を取り込みながら、ぶれずに自分たちの表現を全うしようとする芯の強さは、サウンド、ボーカル両方で心に響く。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS)

 ■ふじた・たくみ 1976年、東京都生まれ。ラジオ、テレビの音楽番組を中心に活動する傍ら、年間150本ほどライブに通う。現場主義の視点で音楽を紹介し続けている。

 ■グリムスパンキー 長野県の同じ高校に通っていた2人が出会い、2007年に結成。13年12月に初の全国流通音源「MUSIC FREAK」をリリース。14年6月にミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。8月にはSUZUKIのCMにて、ジャニス・ジョップリンの「MOVE OVER」のカバーで松尾レミが起用された。最新作「褒めろよ」は、テレビ東京系ドラマ「太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~」の主題歌として書き下ろされた。

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