消えた転売チケット USJ「無効化」奏功 業者に警告…8割返金の動き

2015.12.3 07:30

 大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)で、転売チケットを無効にする措置をとり、1カ月が過ぎた。無効チケットは5000枚以上に上った。当初は入場をめぐるトラブルも予想されたが、実際に転売チケットで入場しようとしたケースはほとんどなかった。

 クレームは2組

 USJの運営会社、ユー・エス・ジェイは11月1日、アトラクションを少ない待ち時間で優先的に利用できるエクスプレス・パスなど数百枚を「転売」と確認。使用できなくした。

 平日でも2時間待ちが当たり前の人気映画「ハリー・ポッター」をテーマにしたアトラクションを優先的に利用できる7200円や9800円のエクスプレス・パスは特に人気が高い。このため、オークションサイトなどで高値で転売されたチケットで入場しようとするケースが続出することも想定されていた。

 ところが、1日に無効チケットを持っていたのは11組。そのうち「なぜ使えないのか」などと厳しいクレームがあったのは2組だけだった。USJの森岡毅(つよし)執行役員は「大半は、使えないチケットと分かって持ってきていたようだ」と話す。

 なぜ、わざわざ持ってきたチケットが無効になったのにほとんどトラブルにならなかったのか。森岡執行役員は「すでに使えないと分かったチケットに返金の動きがあった」と打ち明ける。

 USJは転売チケットを無効化すると同時に、転売業者に「購入したチケットを無効化した。無効化を知りながら転売すれば刑法で詐欺罪に問われる」と警告文を送付し、転売先に返金することを呼びかけた。これを受け、7~8割は返金されていたとみている。

 USJが転売チケットを無効にするのは、USJに行きたいファンに適正な価格で楽しんでもらうのが目的だ。背景には、業者が転売目的でチケットを組織的に買い占めることで人気チケットが売り切れたり、高値で出回ったりするケースが横行していたことがある。転売目的と確認されただけでも年間約10億円分に上り、7200円のエクスプレス・パスがネットオークションで約7倍の5万円で取引されたこともあった。

 そもそも転売目的で買ったチケットを高く売る「ダフ屋行為」は都道府県の迷惑防止条例で規制対象となっているが、ネット上の転売は取り締まるのが難しいとされる。ところが、使えないと分かっていながら無効となったチケットを売れば詐欺罪に問われることになりかねない。これを恐れた転売業者が返金を申し出るというわけだ。

 学生から反省文

 チケットの転売は、インターネット上でやりとりして顔を合わせる必要がないため、「小遣い稼ぎ」の軽い気持ちで手を染めるケースが後を絶たない。主婦や学生、サラリーマンなどが片手間に行うケースも少なくないとみられる。

 USJには「私は苦学生で、学費が払えずやむを得ず行った。刑事告発はしないでほしい」と平謝りの反省文が届いているという。

 転売チケットの無効化は現時点で有効な手段として機能しているようだ。ネットオークションサイトでは10月までエクスプレス・パスなどが出品されており、定価の2倍程度で取引されていたが、11月以降は多くのサイトで出品されなくなった。(SANKEI EXPRESS)

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