積雪わずか6センチ 首都圏の鉄道網大混乱 架線切断・相互乗り入れで影響拡大

2016.1.19 07:30

 本州の太平洋側を急発達しながら進んだ「南岸低気圧」の影響で18日、東京都心で6センチの積雪を観測するなど関東甲信や東北の広範囲で大雪になった。転倒や事故が相次ぎ、交通網も大きく乱れた。

 各地の消防などによると、埼玉県で59人が重軽傷を負うなど、東北と関東では約250人がけがをした。

 駅前から行列100メートル超

 積雪は朝の通勤時間帯と重なり、電車内や駅は大混雑した。JR山手線や京浜東北線は大幅に遅れ、川越線などで架線が切れるトラブルがあり、一部区間で運転を見合わせた。相模鉄道も架線切断で全線が一時ストップし約8万4000人に影響した。東海道新幹線は品川-小田原間で通常より速度を落として運行し約1万1000人に影響した。

 首都圏の鉄道網は、なぜこれほどまでに脆弱(ぜいじゃく)なのか。

 東京都世田谷区の京王線千歳烏山駅。朝の通勤通学ラッシュ時には駅前から100メートル以上の列ができた。運行本数が通常の2~3割程度に減ったため、乗り切れない客がホームにあふれて危険な状態となり、入場制限が実施されたことが原因だ。制限は昼過ぎまで続いた。

 会社員の佐藤智幸さん(33)は、駅のあまりの人だかりに、いったん近所の飲食店に移動。「会社に連絡を入れ、店内で仕事をした」といい、昼過ぎにうんざりした様子でホームに向かった。

 ダイヤ乱れの原因として目立ったのは、列車に電気を供給する架線の切断。京王線では3カ所の車両基地で架線が切れ、車両を出せなくなるなどして大幅な間引き運転を迫られた。JR中央線の一部区間や、相模鉄道全線が一時ストップしたのも架線の切断だ。

 断線理由は各鉄道会社で調査中だが、太平洋側では湿った重い雪が降るため、架線トラブルが起きやすい。

 安全確保のため運行減

 また、鉄道各社は当初から安全確保のため、運転本数を減らしており、トラブルがなくても入場制限を余儀なくされる路線もあった。

 利便性を高めるために鉄道各社が積極的に実施している相互乗り入れも、影響が広範囲に及ぶ原因となった。相互乗り入れの路線で発生したトラブルが、自社路線のダイヤ乱れにつながるためだ。

 今回も、東京メトロ副都心線と有楽町線は、直通運転をしている東武東上線でパンタグラフが雪の重さで上がらない不具合が相次ぐなどしたため、直通運転を中止。その結果、大幅にダイヤが乱れた。

 東京メトロ南北線も、直通運転している東急目黒線で発生したダイヤ乱れの影響を受け、多くの車両で身動きがとれないほど混雑した。

 雪の影響は少ないはずの地下鉄だが、東京メトロの広報担当者は「ダイヤ乱れがいつ収まるかは、雪の影響を受けている路線の状況次第」と、歯がゆさをにじませた。(SANKEI EXPRESS)

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