【安倍政権考】選挙逆風「宮崎氏、辞職すべきでない」

2016.2.13 09:30

 自民党の宮崎謙介衆院議員が、妻で同党の金子恵美衆院議員の出産直前に不倫した問題で、宮崎氏は国会議員の育児休業の制度化を提唱した立場を踏まえ、議員辞職した。辞職に伴う衆院京都3区補選は、北海道5区補選と同じ4月24日投開票となり、自民党幹部は夏の参院選への悪影響も懸念している。

 議員全体の信用に関わる

 「議員辞職は、甘利明(あまり・あきら)前経済再生担当相の辞任劇以上に安倍内閣の支持率を下げるかもしれない。本人にはその自覚があるのか」-。

 ある自民党幹部はこう吐き捨て、天を仰いだ。

 10日発売の週刊文春によると、宮崎氏は1月30日から31日にかけて、自身の選挙区である京都市内のマンションに30代の女性タレントと宿泊。マンションに出入りする2人の写真が複数掲載された。

 金子氏は切迫早産の危険があり、出産予定日の数週間前から入院。今月5日に男児を出産した。宮崎氏は同日のブログで「勉強した陣痛を軽減させるテクニックを駆使してサポートをしたつもりですが、本当に辛そうでした」と強調。「これから2人で大切に育てていきたいと思います」と記している。

 関係者によると、金子氏は難産だったという。宮崎氏は12日の辞職会見で「わが子の顔を見て最初に、喜びと同時に罪悪感を感じた。子供は親を選べない」と涙を流したが、体を張って子を育てるという、親としての自覚が決定的に欠けていたことが「欲に負けた」(宮崎氏)根源だ。

 この一件は、単なる不倫問題で済まされるはずがない。宮崎氏は妻の出産を機に、約1カ月の育休を取得すると宣言。さらに国会議員の活動を規定する衆参両院規則を改正し、長期間の欠席を認める理由に「育児」を追加するよう活動したからだ。

 宮崎氏は「男性の国会議員も、一定の休みを取って育児を体験した方が子育て政策の立案にも有意義」と強調。「1億総活躍社会の推進」を掲げる安倍政権も好感を持ち、菅義偉(すが・よしひで)官房長官や塩崎恭久(やすひさ)厚生労働相がエールを送った。党内の有志は勉強会「男性の育児参加を支援する若手議員の会」を立ち上げるなど、提案は広がりもみせていた。

 それだけに、現職閣僚は「これで国会議員の育休話はなくなった。話ができない状態になった」と肩を落とした。若手議員は「国会議員の育休は、国民から議決権の負託を受けている立場上、ただでさえ否定的な意見が多い。国会議員全体の信用にもかかわる蛮行で、議論の土台は壊れた」と憤る。

 「補選 タイミング最悪」

 今回の辞任劇は、育休制度化への機運がそがれただけでは終わらない。衆院京都3区の補欠選挙は、7月10日投開票が有力視される参院選から2カ月半前という「最悪のタイミング」(自民党幹部)で行われるからだ。もともと衆院京都3区は、2014年衆院選で、宮崎氏が民主党の泉健太氏に約4500票差で辛勝した激戦区。比例復活した泉氏は補選に出馬する意向で、自民党にとっては相当厳しい戦いを強いられることになる。ある党幹事長経験者は「泉氏の出馬に伴い、比例代表近畿ブロックで次点だった民主党候補が繰り上がり当選する。(民主は失うものがなく)自民は危機だ」と頭を抱える。

 同時に行われる衆院北海道5区補選は、野党陣営から政治団体・新党大地が自民党候補の支援にくら替えし、与党にとって明るい見通しも見えていた。自民党選対幹部は「北海道と京都で1勝1敗なら、参院選へ機運は盛り上がらない。宮崎氏は離党したとしても、議員辞職だけはしてはならなかった」と憤った。(政治部 水内茂幸/SANKEI EXPRESS)

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