「作品賞は男優」今度は性差別 米アカデミー賞に不満「女性主人公は困難」

2016.2.27 00:00

 映画の祭典、米アカデミー賞の授賞式が28日に行われるが、今年は賞レースの行方以上に人種や男女の差別問題がスポットライトを浴びそうだ。2年連続で演技部門に黒人がまったくノミネートされなかったことが批判を浴びたばかりだが、今度は最大の名誉である作品賞の主演が男優ばかりだという男女差別への不満が噴出。男性優位のハリウッドで女性の活躍を妨げる“ガラスの天井”の存在が改めてクローズアップされている。

 ■05年以降は途絶える

 男女差別への不満は、メディア研究で権威ある南カリフォルニア大学(USC)のアネンバーグスクールが22日に発表した調査結果がきっかけとなった。

 2014年から15年にかけての1年間に米国で公開・放送された映画とテレビドラマ414作品の登場人物を調べたもので、女性は33.5%と3分の1にとどまった。また女性脚本家は28.9%、女性監督は15.2%しかいなかった。このほか、マイノリティー(少数派の人種)の登場人物も28.3%で、人口全体に占める割合(37.9%)を大きく下回っていた。

 「アカデミー賞の作品賞レースは男の世界」

 調査結果を受け、25日付のロイター通信は、女性映画関係者の不満の声を伝えた。

 それによると、今年の作品賞候補8作品のうち、有力視されているレオナルド・ディカプリオさん(41)=写真=主演の「レヴェナント 蘇えりし者」やマーク・ラファロさん(48)主演の「スポットライト 世紀のスクープ」を筆頭に6作品は男性が主人公。「ブルックリン」と「ルーム」は女性が主人公だが受賞は難しいと指摘した。女性が主人公で作品賞を受賞したのは05年の「ミリオンダラー・ベイビー」以降、途絶えている。

 ベテラン映画プロデューサー、リンダ・オブストさんは「女性が主人公の映画は常に制作が困難だ。映画会社は女性市場の存在を決して信じていない」と憤慨。米コロンビア・ビジネス・スクールのキャサリン・フィリップス教授も「賞の結果が事実をはっきり物語っている。映画会社は、男性が主人公の方がヒットするというビジネスモデルに固執し、同じことを繰り返している」と指摘した。

 米非営利団体ウィメンズ・メディア・センターによると、昨年のアカデミー賞でも、男女別の演技部門を除く19部門の候補者は男性149人に対し女性35人で、監督賞や脚本賞など7部門は女性候補がいなかった。

 ■逸話ゴロゴロ、賃金も差

 ハリウッドでは男女差別をめぐる逸話がゴロゴロある。英紙ガーディアン(電子版)によると、シガニー・ウィーバーさん(66)主演のSF映画「エイリアン」(1979年)やジョディ・フォスターさん(53)主演の「エリジウム」(2013年)は当初、男性が主人公の設定だったが、適役が見つからず、やむなく女性になったという。サンドラ・ブロックさん(51)が主演し、14年に作品賞を逃したSF映画「ゼロ・グラビティ」では、映画会社が監督に主人公を男優に代えるよう圧力をかけ続けたそうだ。

 こうした状況に、米女優のジェニファー・ローレンスさん(25)=写真=は昨年10月、「ハリウッドでは男優と女優の間に性差別的な賃金格差がある」とネットメディアで不満をぶちまけ、男女差別問題に焦点を当てた。

 米誌フォーブスによると、13年にオスカーを獲得し今年も主演女優賞にノミネートされているローレンスさんの昨年の出演料総額は5200万ドル(約58億6000万円)に上り、男女を含め今年の候補者でトップ。だが、彼女はお金や主演女優賞ではなく、作品賞主演の名誉が一番ほしいと思っているに違いない。

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