【国際情勢分析】国連の対北制裁 韓国紙は論調二分

2016.3.8 09:30

 4回目の核実験と事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会が3日(日本時間)、全会一致で採択した制裁決議について、韓国では歓迎の立場の保守系紙と否定的な左派系紙とに論調が分かれた。

 7年を無駄にした中国

 北朝鮮に厳しい姿勢の保守系紙、朝鮮日報(電子版)は4日、韓国の市民団体「北朝鮮民主化ネットワーク」の研究員で人権活動家、金永煥(キム・ヨンファン)氏が記した「北朝鮮問題で7年を無駄にした中国」と題する寄稿を掲載した。「制裁の内容は厳しいが、それが本当に効果を発揮するかどうかは今後の中国政府の意志に掛かっている」と、制裁の実効性について疑問を呈している。

 その理由として制裁の例外条項を挙げ、「北朝鮮の収入源の中で最も大きな割合を占める石炭輸出も、国民生活がその目的である場合は認められているが、何が国民生活のためとなるかは中国政府の判断に委ねられており、これはつまり中国が制裁レベルをいくらでも調整できるということだ」としている。

 主要紙、中央日報(電子版)も3日掲載の社説の中で、「効果的な制裁になるには条件が1つ満たされなければいけない。北朝鮮貿易取引の90%を占める中国が徹底的かつ持続的に制裁に参加しなければいけないという点だ。中国はこれまで、制裁に積極的に参加するような態度を見せ、時間が過ぎれば手綱を緩めてきた。これでは5回目、6回目の核実験を防ぐことはできない。政府は国際社会、特に中国が国連制裁を徹底的に守るよう万全を尽くさなければいけない」と、中国の出方に注目する。

 5者協議で実効確保を

 一方、「窮地に追い込まれれば外部世界との対話を模索するのが北朝鮮のこれまでのパターンだった。このような時、ただ制裁の原則だけを前に出して北朝鮮を追い詰めるのではなく、われわれが主導できる対話局面に誘導することも考慮してみるべきだ」と韓国政府に対しても柔軟な対応を求めている。

 保守系紙、東亜日報(電子版)は4日掲載の社説で「金正恩第1書記が今回の制裁に屈服し、核とミサイルを放棄するかは、国際社会が安保理決議をしっかり実践するかに掛かっている」とした上で、「この機に6者協議のメンバーである米国、中国、日本、ロシアと韓国が5者協議を開いて、今度こそ北朝鮮制裁が実効を上げるよう膝を突き合わせる必要がある」と提案した。

 さらに「金第1書記が考えを変えなければ体制維持が不可能なように、4強と韓国が強力に北朝鮮に圧力をかけていかなければならない」と主張した。

 対話の枠組みこそ重要

 親北傾向の強い左派系紙、ハンギョレ(電子版)は2日、「安保理制裁決議以降がより重要」との見出しで「制裁だけでは核問題を解決できず、対話の枠組みを作るための真剣な努力が必要だ」と対話を訴え、「北朝鮮に対する制裁は核問題の解決策にはなり得ない。論理的に見ても、北朝鮮は自らの体制に対する脅威が大きくなればなるほど、ますます核を放棄するのが難しくなる。今回の決議がどれほど忠実に履行されるかも疑問だ」と制裁に否定的な見方を示した。

 制裁の履行についても「主な内容の履行は、全て中国の意志にかかっているが、中国が核問題に関する全ての責任を負うとは思えないからだ」と懐疑的だ。

 左派系、京郷新聞(電子版)は3日掲載の社説で「今後、対北制裁が本格的に実施されると、状況はさらに悪化するに違いない」と不安視。「今月には韓米合同軍事演習が実施される。北朝鮮は以前にも韓米合同軍事演習にアレルギー反応を見せた。哨戒艦撃沈事件など大小の挑発を行ったのが代表的だ。北朝鮮が5月に開かれる第7回朝鮮労働党大会を控え、内部結束力を強化するために挑発する可能性もある」との懸念を伝えている。

 その上で「これまで以上に危機管理が重要なポイントだ。韓国側も万全の態勢を維持しながら、慎重な行動が必要だ。北朝鮮が挑発する口実となる刺激的な言動を抑制しなければならない」と韓国政府に自制を促した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)

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