「チャレンジ」の春 流行と上質取り入れて メンズバイヤー・宮崎俊一さんとファッションディレクター・関本美弥子さんに聞く

2016.3.8 13:00

 【トレンドを着こなそう!】Vol.31

 風の冷たさが少しずつ和らいできた3月、気持ちも明るくおしゃれを楽しみたい。春先のファッションはこれまでの「装飾性」「アシンメトリー(左右非対称)」、肩の力が抜けた「エフォートレス感」といったトレンドに、上質な素材感がプラスされて進化している。せっかくの春なので少しチャレンジもしてみたい。松屋銀座が提案する着こなしを、メンズバイヤーの宮崎俊一さんとファッションディレクターの関本美弥子さんに聞いた。

 進化した装飾性

 まずはカップルのデート向けコーディネートから。英ナイジェルケーボンのスリーピースは、軍用のランドリーバッグの生地をベースに、当時とは異なる設計で織り直したデニムを使っている。ビンテージ物のコレクターが手がけるブランドで、こだわったものづくりが特徴。「少し違ったテイストのおしゃれを楽しんでみたい方に、チャレンジしてほしい逸品です」と宮崎さん。

 お相手のウィメンズはsakayori.のワンピース。「黒で縁取ったフローラル柄(花模様)は今年らしい。『装飾性』が進化した形です」と関本さん。やはりトレンドの幾何学模様を柔らかくした印象もある。全く違うファッションのようでいて、2人が並ぶと、しっくりくるから不思議だ。

 ウィメンズでも凝った素材が登場。RIEKA INOUEのノースリーブワンピースは、ジャカード織で、鮮やかな花模様を浮き上がらせた。着物にも似た印象で、幅広い層に人気のアイテムとなりそうだ。

 同じくウィメンズのTARO HORIUCHIは、トレンドの「装飾性」と「アシンメトリー」が進化。メタリック加工をした小花模様の生地に、裾の黒の切り返しが絶妙なバランスだ。長くトレンドが続いた、体を締め付けないエフォートレス感は残るものの「ワンランク上のカジュアル感という印象ですね」と関本さん。

 sakayori.のブルゾンは、スポーティーな中にフェミニンな要素が詰まっている。ニットの上に、透け感のある素材とレースをあしらったバランスが面白い。「ディテールに凝ったものが出てきているのも今年らしいですね」と関本さん。肌寒い時にカーディガン代わりに羽織りたい。

 AKIRA NAKAのカットソーは、黒地に一面に花の刺繍(ししゅう)をあしらった。「刺繍はこれまでワンポイントが普通でした。でも一面に広がるとヴィヴィッドで鮮やか。こちらも今年らしいおしゃれです」と関本さん。

 小物もひとひねり

 いっぽう、メンズのコーディネートで松屋銀座が推薦するのはチェックのジャケットだ。パープルとグリーンのコンビが落ち着いた印象を与え、シワになりにくいウール素材。「パープルに挑戦してみましょう」と、宮崎さんはここでも“チャレンジ”を推奨する。

 ニットタイにポケットチーフもパープル。白いラウンドカラーのシャツに、パンツはオフホワイトのコットンサテン素材で、はき込むほどに味が出る。堅すぎず、くだけすぎないコーディネートは「授業参観にも向いたスタイルです」。

 小物もひとひねり。仏の人気靴ブランド「パラブーツ」ではホワイトソールを採用し、アッパーにはネービーとベージュを配した3層構造が春らしい。耐水性の高いレザーで「一足は持っていたい逸品ですね」と宮崎さんは言う。

 インプロヴィゼーションのネクタイは、身につけると右肩上がりのストライプ。米国がルーツの「レップタイ」だ。多くのネクタイは英国がルーツの「レジメンタルタイ」で左肩上がり。レップタイは、「右肩上がりの経済」を期待したいビジネスの現場で話題にできる面白さがある。

 少しずつ進化していくファッション。チャレンジ精神も持ちながら、いろいろ試して自分をすてきに見せるスタイルを見つけていこう。(文:藤沢志穂子/撮影:荻窪佳/SANKEI EXPRESS)

 ■みやざき・しゅんいち 1989年松屋入社、96年より紳士服バイヤー。独学でイタリア語を習得し、欧州での生地買い付けのほか、国内外で仕立て職人や縫製工場、生地メーカーと共同開発したオリジナル商品が人気を集めている。著書に「成功している男の服選びの秘訣40」(講談社)ほか。北海道出身。

 ■せきもと・みやこ 1986年、米国トーメン入社。マーケティング業務などに携わる。89年、レナウン入社。レディースウエアの企画・立案などを経て98年から現職。百貨店、松屋銀座へのファッションディレクション、海外コレクション視察・分析、新規デザイナーの発掘などを手がける。

 ※価格はすべて別税です。

閉じる