【米大統領選】指名争い トランプ氏3州勝利、ルビオ氏撤退

2016.3.17 08:00

 11月の米大統領選に向けた党候補指名争いは15日、民主、共和両党がフロリダ、ノースカロライナ、オハイオ、ミズーリ、イリノイの5州で予備選を行う「ミニ・スーパーチューズデー」と呼ばれる山場を迎えた。共和党では不動産王のドナルド・トランプ氏(69)が大票田のフロリダなど少なくとも3州で勝利し独走態勢に入った。地元のフロリダで敗れたマルコ・ルビオ上院議員(44)は選挙戦から撤退を表明した。民主党はヒラリー・クリントン前国務長官(68)が少なくとも4州を制し、候補者指名に大きく前進した。

 トランプ氏はフロリダ州で45%の支持を得て、27%のルビオ氏を圧倒。イリノイ州、ノースカロライナ州でも勝利し、15日夜の演説で「米国のために偉大な勝利をつかみ続けていく」と気勢を上げた。

 オハイオ州ではジョン・ケーシックオハイオ州知事(63)が勝利。地元フロリダで敗れたルビオ氏は撤退表明演説で、「われわれは正しい側にはいるが、勝利する側にはいない」と述べた。

 一方、民主党側ではクリントン氏がフロリダ、ノースカロライナ、オハイオ、イリノイの4州で勝利。クリントン氏は15日夜、フロリダ州で演説し、「候補者指名の獲得と11月の本選での勝利に近づいている」と自信を示した。

 ミズーリ州では民主党のクリントン氏とバーニー・サンダース上院議員(74)、共和党もトランプ氏とテッド・クルーズ上院議員(45)の大接戦となっている。

 指名獲得に必要な代議員の過半数は民主党は2383人、共和党が1237人。AP通信の推計によると、民主党の獲得代議員数は党有力者らで構成する特別代議員を含めクリントン氏1561人、サンダース氏800人。共和党はトランプ氏621人、クルーズ氏396人、ケーシック氏138人。

 ≪攻撃不発 共和主流派の自力V消滅≫

 「私を攻撃した人はみな敗れている」。米大統領選の共和党候補指名争いでトランプ氏の言葉が再び現実になった。

 トランプ氏への個人攻撃で失地回復を試みたルビオ上院議員は地元のフロリダ州で敗れて撤退。15日の勝利でトランプ氏は指名獲得に向けて独走態勢に入り、主流派が正攻法で打ち破る芽は摘まれた。

 「悪質な中傷広告」

 15日の「ミニ・スーパーチューズデー」に先立つトランプ氏の集会では支持者と反対派が衝突し、ライバル陣営はトランプ氏が対立の原因とするCMを繰り返し流した。

 「政治史上、だれも経験したことのない悪質な中傷広告だった。それでも支持率は上がったんだ」

 トランプ氏はフロリダ州での勝利宣言でこう述べた。

 反対派に演説を妨害されるたびに「あいつをつまみ出せ」「彼の顔を殴りたい」と、暴力を容認するかのような発言で聴衆をあおったトランプ氏。中西部シカゴで衝突により集会が中止に追い込まれたことも、民主党のサンダース上院議員の支持者の仕業だと言い張った。

 米統計学者、ネイト・シルバー氏による出口調査の分析によると、対立が激化した後の予備選直前にトランプ氏への投票を決めた有権者の割合は過去の予備選・党員集会に比べ上昇。マイナスの影響を逃れた。

 ただ、不法移民やイスラム教徒を侮辱する暴言で既成政治への有権者の怒りをあおり、支持を集めるトランプ氏の手法に、共和党主流派は危機感を募らせている。主流派の期待を背負っていたルビオ氏は撤退表明で、「人々を怒らせ、不満を抱かせるのが最も安易な道だが、そうしなかったことが誇りだ」と述べた。

 競合大会を模索

 主流派は、トランプ氏が11月の本選で民主党のクリントン前国務長官と戦った場合には敗れる可能性が高いとの世論調査を懸念。7月の共和党全国大会の第1回投票で指名が決まらず、下位の候補か「第3の候補」が決選投票に挑む「競合大会」とすることを模索する。

 それにはトランプ氏に代議員の過半数を獲得させない必要がある。

 クルーズ上院議員やオハイオ州のケーシック知事の今後の戦いにかかっているが、トランプ氏は15日の勝利により指名候補を決める7月の共和党全国大会までに代議員の過半数を確保できる可能性が出てきた。

 指名が現実味を帯びる中、共和党のライアン下院議長、マコネル上院院内総務はトランプ氏との電話で支持者の暴力行為にくぎを刺した。トランプ氏は勝利宣言で2人との電話を「素晴らしい会話だった。私たちは党をまとめる」と紹介。米CBSテレビはこれを「トランプ氏は本選を戦う気分に移った」と報じた。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS)

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