いよいよ山坂道へ。関西で「聖地」と誉れ高い芦有ドライブウェイは、よく整備された路面と急勾配に小半径カーブが連なる絶好の“テストコース”だ。ここに来て、308 GTiはようやく隠していた牙を剥き出した。一般道で硬いと感じた乗り心地は抜群の安定感を生み、直進ではさほど感じなかった剛性感がグッと前面に出てくる。低扁平のスポーツタイヤが路面をしっかり掴んでいる感触がハンドルに伝わってきて、操舵に対し忠実に曲がっていく足回りが実に頼もしい。スピードを上げていくにつれ、FFっぽさが薄れていくのも面白かった。
ブレーキの効きも非常に良く、安心してスピードコントロールができる。それでいて突然ガツンと効くようなシビアな感じはなく、扱いやすさも兼ね備えている。こういった素直な操縦性は、穏やかに一般道を走っているときにもさりげなく発揮されているはずで、欧州Cセグの熟成ぶりが窺える。
あり余るパワー 走りながらホイールスピン
お待ちかね本日のメインイベント、スポールモードの味見に移ろう。結論から言うと、このモード、公道では完全に持て余す。
加速が鋭すぎて、あっという間に制限速度に達してしまうからだ。高回転を保って、急激な加減速を繰り返すようなこのモード本来の走り方は、公道でやってもストレスがたまるばかり。山坂道でかろうじてその片鱗は感じられたかな、というほどの奥深さを持っている。
しかも単に加速が鋭いというだけでなく、クラッチをつなぐタイミングよりもアクセル操作に対するエンジンのレスポンスの方が恐ろしく速く、思いのほか回転数が上がりすぎてクラッチをつないだ瞬間に走りながらホイールスピンしてしまったほどだ。この速すぎるレスポンスには1日乗っていただけでは慣れることができず、消化不良なまま試乗を終えたのは心残りだった。今になって思えば、クラッチをつなぐタイミングをもっと早くすればちょうど良かったのだろう。スポールモードの挙動は完全にサーキット基準でチューニングされていると思われる。コンマ1秒を争う世界で、瞬時に行われるクラッチ&シフト操作に対応するためのレスポンス強化と考えると納得がいく。もしもう一度試乗する機会があれば、次はぜひサーキットを走ってみたい。