直進安定性はベース車両のゴルフ譲りで、レールの上を走っているよう。十分に整備された自動車専用道でのドライブなら、どこまでも走っていける気がするほど安心感が高く、ドライバーを疲れさせない。面白いのは、非常に安定していながらも「乗せられている」感じはなく、常にドライバーが主導権を持って操っている感覚が強いところだ。だから、単調な長距離走行でも飽きることがない。くどいようだがゴルフのこういうところ、Cセグの域を完全に超えていると改めて感心する。
強烈なG 実質ツインチャージャーの“ロケット”モード
伊勢西インターで一般道に降りて、多島美で知られる賢島方面へ。途中のワインディングロードでエンジンとモーターがフルパワーを発揮する「GTEモード」に切り替える。
アクセルを底まで踏み込むと、その加速はまさにロケット。後ろでジェット噴射しているのでは…というのは大げさだが、背中がシートに押しつけられる強烈なGを伴って、バッヒューンとすっ飛んでいく。この時、メインの駆動力はエンジンで、モーターは「エレクトリックブースト」と名付けられたスーパーチャージャーのような役割を果たす。搭載された1.4リッターエンジンにはもともとターボがついているので、実質ツインチャージャーと捉えることもできる。
GTEのエンジンとモーターの合計出力は204馬力の35.7kgf・m。トルクだけならGTIと同値、パワーも-16psと肉薄している。こりゃ速くて当然である。
長い直線路が続く高速道路では高回転時の出力に優るGTIのほうが速いと思うが、細かい加減速を繰り返す山坂道では、ひょっとするとモーターの瞬発力に優れるGTEのほうが速いかもしれない。
旋回制御と大径ブレーキの安心感
ただ速いだけではなく、操縦性もいい。「XDS」という電子旋回制御が常時働いて、前輪駆動車特有のアンダーステアを打ち消してくれるから、普通のスピードで駆け抜けるときは言うまでもなく、思いがけずハイペースでコーナーに突っ込んでしまっても、ABSが効いたときのような「ゴリッ、ゴリッ」という音とハンドルに伝わる手応えとともに減速しつつ、車線をはみ出すことなく安全に、何事もなかったかのようにきれいに曲がっていく。いや、曲げていくと言うほうが的確かもしれない。