ハイパフォーマンスカーの楽しみの一つがエンジンをかける瞬間だが、CTS-Vも例に漏れず、体の芯を震わせるほどの迫力サウンドを発生する。ベンツのAMGなどもそうだが、普段から聞き慣れていないと一発目はビビッてしまう。それでもほとんどのプレミアムカーの場合はエンジン音に上品さを感じるのだが、CTS-Vはむしろ周囲を威嚇する獰猛な肉食動物のよう。それもそのはず、このクルマにはコルベットとほぼ同型の6.2リッターV8スーパーチャージャー付きエンジンを搭載しているのだ。
中身は本格スポーツカー
ボディのシルエットこそセダンだが、車内の仕立ては完全にスポーツカー。前席はレカロ社製の本革スポーツシートを採用し、がっちりとしたホールド性は文句なし。ダッシュボードやドアトリムにカーボンファイバーのパネルを使用して軽量化を図り、ハンドルやシフトレバーは滑りにくい起毛素材「スウェーデッド・マイクロファイバー」で覆われている。
足の裏全体を使ってオルガン式のアルミペダルを踏むと、「ブウォォォーン」と野太いエンジン音を響かせながら力強く走り出した。まずは都内の一般道を走ってみたが、低中速度域の走りはパワフル&スムーズ。とくに低速域のエンジンフィールが想像以上に滑らかで、ストップ&ゴーの多い都心の混み合った道路でも扱いやすい。もちろん必要があれば、ちょっと踏んでやるだけで一気に加速。スーパーチャージャーによる過給があるため、低回転でも力を発揮する。
ハンドルは程よく重くて手応え良し。トランスミッションは8速ATを採用している。後輪駆動(FR)らしい操作性の高さや19インチのミシュラン・パイロットスーパースポーツという高性能タイヤを履いた高グリップがもたらす走りは、普通の中型セダンでは味わえない刺激を体験できる。走行時の挙動は本格スポーツカーだ。