【試乗インプレ】「馬車」で読み解く初期の自動車史 トヨタ博物館見学記(常設展示・前編) (3/4ページ)

  • トヨタ博物館
  • 常設展示はこの一台からスタート。史上初の自動車、ベンツ・パテントモトールヴァーゲン“レプリカ”(1886年・独)。トヨタ博物館
  • スタンレー・スチーマーモデルE2(1909年・米)。トヨタ博物館
  • 人力車(明治後期・日本)。トヨタ博物館
  • フォード・モデルT(1909年・米)。トヨタ博物館
  • イタリアンレッドのアルファロメオ・6C1750グランスポルト(1930年・伊)。トヨタ博物館
  • 映画の題材にもなった悲運の名車。タッカー’48(1948年・米)。トヨタ博物館
  • ベンツ・ヴェロ(1894年・独)。トヨタ博物館
  • ド・ディオン・ブートン13/4HP(1898年・仏)。トヨタ博物館
  • パナール・ルヴァッソールB2(1901年・仏)。トヨタ博物館
  • ベイカー・エレクトリック(1902年・米)。トヨタ博物館
  • オールズモビル・カーブドダッシュ(1902年・米)。トヨタ博物館
  • ランチェスター(1904年・英)。トヨタ博物館
  • イソッタ・フラスキーニティーポI(1908年・伊)。トヨタ博物館
  • ロールスロイス・40/50HPシルバーゴースト(1910年・英)。トヨタ博物館
  • キャデラック・モデルサーティ(1912年・米)。トヨタ博物館
  • モーリス・オックスフォード(1913年・英)。トヨタ博物館
  • プジョー・ベベ(1913年・仏)。トヨタ博物館
  • デイムラー・タイプ45(1920年・英)。トヨタ博物館
  • あれ?後輪がない、と思って後ろに回ると…モーガン・エアロ(1922年・英)。トヨタ博物館
  • …3輪でした。モーガン・エアロ(1922年・英)。トヨタ博物館
  • エセックス・コーチ(1923年・米)。トヨタ博物館
  • オースチン・セブン“チャミー”(1924年・英)。トヨタ博物館
  • シボレー・スペリアシリーズK(1925年・米)。トヨタ博物館
  • シトロエン・5CVタイプC3(1925年・仏)。トヨタ博物館
  • フレンチブルーに塗られたブガッティ・タイプ35B(1926年・仏)。トヨタ博物館
  • 運転席とキャビンの仕立てを比べてみよう。イスパノスイザ・32CVH6b(1928年・仏)。トヨタ博物館
  • キャビンはさながら応接室。運転席との間にはガラスの仕切りも。イスパノスイザ・32CVH6b(1928年・仏)。トヨタ博物館
  • デューセンバーグ・モデルJ(1929年・米)。トヨタ博物館
  • ブリティッシュグリーンのベントレー・41/2リットル(1930年・英)。トヨタ博物館
  • シボレー・コンフィデレイトシリーズBA(1932年・米)。トヨタ博物館
  • ようやく国産車が登場。さらに古い国産車の模型展示もある。ダットサン・11型フェートン(1932年・日本)。トヨタ博物館
  • 時代は流線形へと移行していった。デ・ソート・エアフローシリーズSE(1934年・米)。トヨタ博物館
  • フォード・モデル40(1934年・米)。トヨタ博物館
  • 佐賀の鍋島家当主、鍋島直泰氏がシャシーで購入し自らボディーをデザイン、日本の職人に製作・架装させた珍しい一台。イスパノスイザ・K6(1935年・仏)。トヨタ博物館
  • メルセデスベンツ・500K(1935年・独)。トヨタ博物館
  • 筑波号東京自動車製造株式会社製(1935年・日本)。トヨタ博物館
  • ルパンのチンクエチェントのご先祖。確かにこりゃ“ねずみ”だ。フィアット・500“トッポリーノ”(1936年・伊)。トヨタ博物館
  • ランチア・アストゥーラティーポ233C(1936年・伊)。トヨタ博物館
  • シトロエン・11B(1937年・仏)。トヨタ博物館
  • レトロフューチャーの白眉。1930年代とは思えない。コード・フロントドライブモデル812(1937年・米)。トヨタ博物館
  • リンカーン・ゼファシリーズHB(1937年・米)。トヨタ博物館
  • SS・ジャガー100(1937年・英)。トヨタ博物館
  • SS・ジャガー100(1937年・英)。トヨタ博物館
  • ブガッティ・タイプ57C(1938年・仏)。トヨタ博物館
  • プジョー・402(1938年・仏)。トヨタ博物館
  • ヒトラーの掲げた「国民車構想」に基づいてフェルディナント・ポルシェが設計したフォルクスワーゲン・38プロトタイプ“レプリカ”(1938年・独)。トヨタ博物館
  • ドラージュ・タイプD8-120(1939年・仏)。トヨタ博物館
  • パッカード・トゥエルヴ“ルーズヴェルト専用車”(1939年・米)。トヨタ博物館
  • 防弾ガラスをはじめ装甲車並みに補強を施されたパッカード・トゥエルヴ“ルーズヴェルト専用車”(1939年・米)。トヨタ博物館
  • フォード・モデルGPW“ジープ”(1943年・米)。トヨタ博物館
  • 幌と風防をたたむと、前後フェンダーの上にもう一台のジープを重ねられるように設計されている。フォード・モデルGPW“ジープ”(1943年・米)。トヨタ博物館
  • ボンネットとフェンダーの一体化はこのあたりから。チシタリア・202クーペ(1947年・伊)。トヨタ博物館
  • MG・ミジェットタイプTC(1947年・英)。トヨタ博物館
  • キャデラック・シリーズ60スペシャル(1948年・米)。トヨタ博物館
  • ジャガー・XK120(1951年・英)。トヨタ博物館
  • ポルシェ・356クーペ(1951年・独)。トヨタ博物館
  • サーブ・92型(1951年・スウェーデン)。トヨタ博物館
  • トヨペット・SA型乗用車(1951年・日本)。トヨタ博物館
  • ヨーロッパ戦線から帰還した米兵たちが夢中になったコンパクトな欧州スポーツカーに対抗して作られた、シボレー・コルベット(1953年・米)。トヨタ博物館
  • コルベットの好敵手、フォード・サンダーバード(1955年・米)。トヨタ博物館
  • メルセデスベンツ・300SLクーペ(1955年・独)。トヨタ博物館
  • レーシングカーベースの構造でサイドシルが高く幅広かったため、ガルウイングドアにせざるを得なかったと言われる。メルセデスベンツ・300SLクーペ(1955年・独)。トヨタ博物館
  • メルセデスベンツ・300SLクーペ(1955年・独)。トヨタ博物館
  • 19世紀後半から1950年代の車両が年代順に並ぶ2階フロア。トヨタ博物館
  • トヨタ博物館外観


 人力車からたったの100年ちょっとで、日本の自動車産業と交通インフラが欧米のそれに伍する水準にまで高まったのは一人の日本人としてとても誇らしい。

 しかし同時に、馬車時代から連綿と続く文化(哲学と言うべきか)的背景を持たない日本のクルマが依然追いつけない部分が残っていることも、この欧米自動車史との違いを知るとなんとなく腑に落ちるのである。

 フロント搭載、リア駆動へ

 馬車然とした造形が大きく変化したのは、エンジンをフロント搭載にしたあたりから。前部のボンネット内にエンジンを積み、チェーンではなくプロペラシャフトで駆動力を後輪に伝える方式、今で言うところのFRが主流となった。この構造変化によって、大排気量、大出力の大型エンジン搭載が可能になって、性能が大幅に向上。さらにキャビンを低くでき低重心になったことで、乗り降りが容易になり、走行安定性も高まっていった。

 大衆化を加速させたT型のイノベーション

 20世紀初頭の最大のトピックはやはりT型フォード(1908年、展示は1909年生産モデル)だろう。

 ベルトコンベヤーを導入した流れ作業による大量生産(ライン生産方式)で製造コストを抑え、販売価格を一気に低廉化して、幅広い所得層に自動車を開放したこのモデルは、自動車産業のみならず、すべての製造業、そして工場労働のあり方を大きく変革した象徴的な工業製品と言える。

 チャップリンがフォードでの工場見学に着想を得て制作した映画「モダン・タイムス」(1930年)を引用するまでもなく、ライン生産は工場経営者と消費者にとってメリットの多い方式である一方、単純作業の反復が労働者の人間性を喪失させるという批判もある。しかしながら、T型の生産でフォードが確立したこの方式に大手の競合各社が追従、敷衍したことで、現在に至る自動車の大衆化が大きく進んだこともまた事実なのだ。

 欧州ではレースが流行

 いち早く大衆化が進んだアメリカに対し、欧州ではまだ自動車は高価で、ユーザーは上流階級がほとんどだった。そのせいもあってフランスを中心に、自動車の使い道として趣味性の高い自動車レースが盛んに行われた。公道から始まったレースは専用のサーキットが作られて本格化。国際レースも開催されるようになり、各メーカーが自社の工業技術の高さをアピールする場として、ひいては国威発揚の場へと盛り上がっていった。

ボディーを作っていたのは自動車メーカーにあらず