着座位置が低めの大柄なシートに座ると、左右に盛り上がったフロントフェンダーのふくらみが見える。車両感覚がつかみやすく、スポーツカーに乗りこんだような気分になってくる。Aピラーは形状を工夫し、強度に影響する断面積を確保しつつドライバーの視野を妨げないよう配慮されている。
一番気に入ったのは高めのセンターコンソールだ。あたかも後輪駆動車のようで、短めのシフトレバー、前傾したナビ・空調パネルと相まってこちらもスポーティーな雰囲気を醸し出す。だが、内装の質感は安っぽさこそないものの、高級感はいまひとつ。ボディーサイズや、流麗なスタイルに見合うあと少しのリッチ感が欲しいところだ。
TYPE Rイメージを踏襲したハッチバック
ハッチバックも内装はほぼ同じだが、荷室容量を確保するために後席をセダンよりも3.5センチ前に設置しているため、膝元空間が少し狭くなる。と言っても体感的にはそれほどの差はなかった。
落ち着きのある外観のセダンに対し、ハッチバックはリアルスポーツモデルのTYPE Rを彷彿させる若々しくアグレッシブな造形だ。フロントフェイスもセダンと差別化したいかついTYPE R風で、ホイールサイズがセダンより2インチ大きいこともあって、乗る前から走りの良さを予感させる。
荷室はセダンが519リットル、ハッチバックが420リットルと同クラスではダントツの容量だ。いずれも開口部の横方向が広く、下端も低いので積み込みがしやすい。ただ、セダンは深い奥行きで大容量なのはうれしいのだが、デザイン優先でトランクリッドの前後が短く開口部が狭いのが玉にきず。積載性はリアガラスごとガバッと開くハッチバックのほうがいい。容量をとるか、使い勝手をとるかという選択になるだろう。
セダンは質感高く快適な乗り味
さて、いよいよ試乗の時間がやってきた。許された時間はセダンとハッチバック1時間ずつだ。いずれもCVTでハッチバックのMTは試せなかった。
最初はセダン。東名御殿場インター付近から箱根・芦ノ湖方面を目指す。平日にもかかわらずそこそこ交通量があり、存分に性能を試すというわけにはいかなかったが、穏やかなスピードで走っていても、実力の片鱗を垣間見ることができた。
おそらくホンダは、ミニバンやSUVユーザーに乗り換えてもらえるとは端から思っていない。奪いたいのは、VW・ゴルフやルノー・メガーヌの購入を検討しているユーザーだろう。たとえば、シビックハッチバックと同等スペックのゴルフハイラインは346万円、メガーヌGTは334万円。実に50万円以上の開きがある。相手が輸入車ということを割り引いて考えてもお値打ちと言っていいのではないか。