豪華絢爛のインテリア
全長5285ミリ、全幅1947ミリ、ホイールベース3112ミリといった寸法や、6.6リッターV12ターボエンジンというスペックは、ベース車両のレイスと全く同じ。571馬力、780Nmなどの動力性能はレイスに一歩譲るものの、約2.6トンの巨体ながら0-100キロ加速を5秒フラット、最高時速250キロをたたき出すのだから、こちらもある意味「化け物」だ。見た目の華やかさなら間違いなくドーンが勝る。
高級家具のようにがっしりと大きいレザーシートに収まり、観音開きのドアを閉めようとするが、グリップをつかもうにもドアの先端がかなり遠い。ここで腕をめいいっぱい伸ばして「よいしょー!」と閉めてはお里が知れる。ロールス・ロイスのドライバーは車内のボタンを押しながら電動でスマートに閉めるのだ(筆者はたまたま「DOOR」と書かれたボタンを見つけたため、その場で広報担当に確認することで恥をかかずに済んだ…!)。
インテリアはとにかく豪華。中でもひと際目を引くのが、ダッシュボードからドアパネル、後席背後のリヤデッキまでキャビン内をぐるりと囲むウッドパネルだ。これだけ大胆かつ贅沢に木材を敷き詰めたクルマは恐らく他にないだろう。ちなみに広報車は「パルダオ」という高級木材を使用しているそうだ。ほかにも本革や金属パーツをふんだんに用いるなど、3つの異なる素材を見事に調和させている。一歩間違えれば下品ともとられかねない組み合わせだが、これらの素材を華麗で上品なパッケージに仕立てる職人たちの技巧には脱帽するばかりだ。内装に関しては職人らと直接相談することが可能で、どんなに細かい要望でも応えてくれるという。これは英語で「bespoke」(ビスポーク)と呼ばれるもので、ロールス・ロイスでは採寸して仕立てたスーツのように、自分のクルマをオーダーメードすることができる。
純白のメーターや銀色のオーディオスピーカー、アナログ時計などの装飾品はどれも精巧で芸術美に溢れている。とにかく手や目に触れるものすべてが究極的に上質で、目が釘付けになるほどに美しい。ドーンに触れていると、「これはもはや『クルマ』という枠をはるかに超えた存在なのでは…」などと考え始めてしまう。これまで自分なりに培ってきた感覚や価値観といったすべてが根底から覆されるようで、積み重ねてきた経験がまったく評価軸として機能しない状態だ。「階級が違う」といったら語弊を招くかもしれないが、試乗を通して『クラス』という言葉を意識したのは初めてである。