リクライニング不要 絶妙な背もたれの角度
身長172センチの私がシートポジションを合わせた運転席の真後ろに座って、後席には足を組める空間が広がる。
パサートよりも4センチ長いホイールベースが奏功し、後席ではリムジン的なもてなし感を味わうことができる。
クーペスタイルでルーフ後端が下がっているため、さすがに頭上はこぶし1つ分しか余裕がないが、全高を3.5センチ下げていることを考えると十分な後席室内高が確保されていると言っていいだろう。
個人的には後席背もたれの角度が絶妙と感じた。高級セダンでは背もたれのリクライニング機能が装備されているものも多いが、アルテオンはリクライニング機能が要らないと思えるちょうどいい角度で作られている。移動の距離にかかわらず、乗り降りしやすく、リラックスでき、かつ疲れにくい角度と言える。
後席足元のセンタートンネルは四輪駆動ということもあって高めであり、真ん中に大人が座ると足元は窮屈に感じるだろう。
大人4人なら、長距離ツーリングでどこに座ったとしても疲れは少なそうだ。
前方、後方の視界はまずまず良好だが、全高を下げたことで、サイドウインドーの面積は狭くなっている。
全体にガラス面積が広く、スクエアなボディーで見切りもいいパサートと比べると運転しやすさや開放感では劣る。しかしクルマの性格を考えると、むしろ包まれ感や安心感が高い、と評価するのが適当のように思う。
荷室容量は563リットルと、パサートセダンの586リットルよりも少し劣るが、リアハッチが大きく開く分積み込みしやすい点ではノッチバックセダンのパサートより使い勝手がいい。
開閉は電動で、両手が荷物でふさがっていても、バンパー下のセンサーが足先のジェスチャーを感知して自動でハッチが開く。荷室後端の横幅が広いことと併せて、日々の買い物に便利なのはもちろん、ゴルフ愛好家にとってもうれしい装備と言える。
パサートばかり持ち上げてしまったけれど、四輪駆動が必要ならアルテオン一択となる。FFしかないパサートの2リッター版最上位モデルとの40万の価格差を許容できるなら悪くない選択かもしれない。
他社ライバルの価格設定は、BMWの4シリーズグランクーペの四駆仕様が633万円から、アウディ・A5スポーツバックのクワトロ(四駆)は686万円からとやはりお高い。それぞれアルテオンとの価格差は約90万円と140万円で、お得感では圧倒的にアルテオンに分があるし、BMWもアウディもVWに比べてオプションの単価が高めに設定されているので、最終的な支払額ではもっと差が開く。
しかしライバルにはブランド力の強さに加え、BMWはミッションが8速、アウディは内装の質感が数段上と高いなりの理由もあって、なかなか悩ましい。
また、既存VW車とプレミアムブランドの隙間を狙う絶妙な価格設定、と見ることもできる。松・竹・梅と並べられると竹を選びがちな日本人の心理を狙っているのかもしれない。
お得感と外観デザインの魅力で、どこまでライバルの牙城を崩せるか、要注目である。▼【試乗インプレ】のアーカイブはこちらから