異界に舞い下りた奇跡の饗宴 「和魂漢才」に身震える 国東で深化したダイニングアウト  (3/5ページ)

  • 至福の時間にゲストの顔にも笑みがこぼれる
  • レクサスに乗り込む筆者。期待が高まる
  • 国東の街道をひた走るレクサス
  • 石段を登るゲスト
  • 護摩焚き供養。一切の煩悩を焼き付くすとされる炎が燃え上がる
  • ホストを務めた中村氏(左)と川田氏
  • 説明する中村氏とゲストら。ディナー会場とはにわかに信じられない光景
  • 至高の一皿をゆっくりと味わう
  • 調理する川田氏。気合が充実
  • テーブルでパフォーマンスを見せるスタッフ。川田シェフを支える裏方も大活躍
  • 一皿ごとに語りたいストーリーがある
  • 自然と一体になった饗宴
  • 「国東開胃菜」。味わい深いオイスターに、日本と中国の古酒の香りをプラス
  • 「爆米炸泥鰌」。紹興酒の香りをまとった泥鰌のおこげ揚げ
  • 地元の野菜や牡蠣を中国茶で蒸した「岩香蒸山海」
  • 「峨眉山排骨」。唐辛子が目を引くが、口にすると桜王豚の脂の旨みが広がる
  • 鬼の形相の三島フグを使った「国東的良鬼」。地元で採れたこだわりの白米と
  • シェフが修行時代から毎年作っているデザート「爽口凍青梅」


 切り立った崖に突如現れたオープンキッチン、そして純白のテーブルクロスに包まれた客席。すでにここまで浮世離れだが、ついに異世界に迷い込んだ心持ち。ぜひ写真をご覧頂きたいが、この場所でディナーだなんて夢を見ているようだ!

 そしてオープンキッチンと野外、このライブ感をどう表現すればいいのだろう。「準備はいいか?」。キッチンの中心で忙しく鍋を振り、周囲の視線をくぎ付けにする男性が。今宵のもう一人の主役、中華料理シェフの川田智也さんだ。

 「1300年の歴史でこんなイベントが行われるのは初めて。後世に残るだろうと思います」

 感慨深げに切り出した中村さんと一緒に乾杯。いよいよ饗宴の始まりだ。

 ウエルカムドリンクにまずしびれる。文殊仙寺の山号にちなんだ中国茶「峨眉雪芽(がびゆきめ)」を、境内に湧く名水「知恵の水」で淹れた。中国と国東の融合、それが川田シェフの今宵のテーマだ。

 1982年生まれの川田シェフは、中華の名店「麻布長江」で経験を積み、その後日本料理の名店「龍吟」でも修行を重ねた異色のキャリアを持つ。昨年2月に都内でオープンした「茶禅華」は、わずか9カ月でミシュランを獲得。今もっとも注目される気鋭の中華料理人の一人だ。

 日本料理の繊細な風味と滋味深さと中国大陸の料理文化を独自の技術で融合する。川田さんが「和魂漢才」と呼ぶテーマが、今回のダイニングアウトのイメージに重なり、シェフに抜擢された。

◆「和魂漢才」を追い求めるシェフ

 その「和魂漢才」の真骨頂は、地元の野菜やオイスターを中国茶で蒸した「岩香蒸山海」だろう。調理法を聞かなければこれを日本料理と思い込んでも不思議ではないほど、川田シェフの引き出しの豊かさを感じさせる。国東の干しシイタケの旨みと「完成されている」と川田シェフがうなったオイスターの食感が絶妙だ。

地域を元気にしたい、その思いが共感呼ぶ