“サプライズ感ゼロ”が最大の驚き?! 「普通」だったアップルウオッチ

2015.3.14 17:11

 米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」の詳細が公表された。私見だが、第一印象はアップルらしくない想像できた「普通の商品」。その機能、そのデザインに世界中の人々が驚いたスマートフォン「iPhone」、タブレット型端末「iPad」などとは異なり、アップルウオッチは「アップル製品なのにサプライズ感ゼロ」というのが最大の驚きかもしれない。

 過去のヒット商品とは異なる「重み」

 4月24日から日米英中などで発売されるアップルウオッチは、iPhoneの付属品と位置付けられ、iPhoneとの連携でメールの送受信や電話の着信などが可能だ。また心拍数センサーや加速度センサーなどを搭載し、利用者の運動量管理に役立てることができる。

 充電池の持続時間は一般的な使用で18時間。素材別に3機種あり、サイズやバンドのデザインが異なる計38モデルで展開される。価格は4万2800円から218万円(いずれも税抜き)。

 売れる、売れないはさておき、アップルウオッチは過去のアップル製品とは異なる意味で話題をさらっている。

 そのひとつがウエアラブル(装着)型端末では後発組となることだ。デジタル音楽プレーヤー「iPod」やiPhone、iPadなどアップルは、常に世の中に存在しない革新的な商品を生み出し、新しい市場を創造してきた。

 サムスン、ソニーの後発で勝てるか…

 これに対し、アップルウオッチは、アップルが作る腕時計型端末として脚光を浴びるものの、すでにソニー、韓国サムスン電子などが同様の商品を発売済み。アップルは後発で、実機を手にしたメディア関係者の1人は「質感は良い。また発色が抑え気味でそれが独自性につながっている」と話す一方、「新しさを感じない」と漏らしており、過去のアップル製品とは異なるスタートとなる。

 確かに機能、外観などを見ただけの個人的な感想を述べさせてもらえば、サムスン、ソニー製品を凌駕する圧倒的な独自性は感じられない。

 裏読みすれば、アップルらしい革新性が皆無な「普通の商品」というところが逆に目新しいともいえる。

 もうひとつの注目点はカリスマ創業者のスティーブ・ジョブズ亡き後、アップルウオッチは初めての戦略商品となることだ。

 カリスマ経営者亡き後の初の戦略商品

 iPhone、iPadなどはジョブズの開発思想がそのまま形となり、強烈なリーダーシップで世界中にこれらの商品の情報を発信してきた。ジョブズは生前、アップルTVの発売を夢見たといわれ、もしかしたらアップルウオッチも彼の思いが詰まっているのかもしれない。しかし、それでも死後3年半が経過しており、ジョブズというよりも現CEO(最高経営責任者)のティム・クックの意向が反映された商品といえるだろう。

 ウエアラブル端末は、将来の有望市場として期待されているが、規模はまだ小さい。腕時計型の売り上げも微々たるもので、「先行するサムスン、ソニーともアップルの参入は脅威ではなく、市場拡大の起爆剤とみていたはずだ」(業界関係者)と推測する。

 アップル信者、時計マニア以外も買うのか?

 アップルは、アップルウオッチの販売計画を明らかにしていないが、「アップル信者、一部の時計マニアなどには売れるだろう。ただ、iPhoneユーザーの多くが買うかは未知数である」と別の関係者は指摘する。その理由のひとつが「ぜひ購入したい」と思わせる驚くような革新性、独創性に乏しいことだ。iPhoneと連動して利用するということもあるが、iPhone、iPadなどの延長線上にある商品といえる。

 アップルは昨年秋に発売した「iPhone6」が世界中で爆発的に売れ、昨年10~12月期のスマホ世界販売ではサムスンを抜き、首位に立つなど業績は好調に推移している。しかし、iPad以降、革新的・独創的な商品は登場せず、一部には「勢いに陰りが見える」(関係者)との声も聞こえてくる。

 アップルも「普通の会社」になったのか。それとも再び成長軌道を描くことができるのか。アップルウオッチの売れ行きは、その試金石となる。

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