JR越美北線、暴れ川と消えた夢と 未完のローカル線の将来を見守る

2016.1.2 06:30

【鉄道ファン必見・列車のある風景】

 九頭竜(くずりゅう)川-何と勇ましく恐ろしげな名前であることか。越美北(えつみほく)線がこの川に出会う大野盆地東端から、付近の地形はいきなり急峻(きゅうしゅん)な山岳地となる。逆に言えば川が急激に盆地へ流れ下る。その名の通りの暴れ川だったと想像がつくのだ。

 この北国一の暴れ川を治水したのが雄略天皇、西暦477年というから古い。そして黒龍(くずりゅう)大神を祀った。九頭の龍が川を渡ったという伝説も生まれたが、そもそも日本を守る四神の一で、鹿島(常陸=茨城県)、熊野(紀伊=和歌山県)、厳島(いつくしま)(安芸=広島県)と並ぶ大神だった。

 越美北線沿線を通る国道158号線を車で走っていると、急激に視点が高くなるのに気づいた。路肩から見下ろすと、遥か眼下に大野盆地の静かな秋景色が雄大に広がっていた。

 鉄路は山間を蛇行する九頭竜川を何度か鉄橋で渡り、かつての終着駅・勝原(かどはら)に到着する。ここからは直線的に掘削された長いトンネルをくぐって九頭竜湖駅に。しかし2000メートル級の山々を超えられず、美濃への接続は夢と消えた。

 試練を迎えたのは平成16年7月18日の福井豪雨。暴れたのは九頭竜川ではなく、足羽(あすわ)川だった。鉄路は一部で壊滅的被害を受けて営業再開が危ぶまれたが、福井県交通まちづくり課によると、工費のうち県が国の補助を含め約28億円を負担して、19年6月30日、全線での運転再開を果たした。しかし利用客数の減少は続く。未完のローカル線の将来を見守りたい。

(文化部長 藤浦淳)

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