【CAのここだけの話♪】〈魅惑のドイツ〉意外なお国柄を知ればもっと楽しい旅に

2017.9.10 07:00

 SankeiBizの読者の皆さんだけに客室乗務員(CA)がこっそり教える「ここだけ」の話。第10回は、ドイツの航空会社で日本人CAとして乗務6年目の清水陽子がお送り致します。

▽日本とヨーロッパを結ぶハブ空港、フランクフルト

 筆者が在籍する航空会社では、フランクフルトからは羽田空港、関西国際空港、中部国際空港の3都市に就航しており、ドイツにいらっしゃる方だけでなく、他のヨーロッパ各国やブラジルなどの中南米へ向かわれるお客様がご利用されます。基本的に日本線には3名から4名の日本人乗務員が乗務しております。最近では日本食や文化の浸透により、日本好きなドイツ人以外のヨーロッパ人も日本線を多く利用し、特に桜や紅葉の季節にはほとんどのお客様が西洋人といったことも珍しくありません。

▽日本人からみたドイツ・ドイツ人のイメージとは?

 皆さんはドイツという国に対してどんなイメージをお持ちでしょうか?

 ビール、ソーセージ、フットボールにドイツ車、極め付けはジャガイモ消費大国といったところでしょうか? 筆者はドイツに住み始めるまで上にあげたようなイメージしかありませんでした(笑)。中でもドイツに来てまだ日も浅い頃、街中を普通に走るタクシーやバスがベンツだったのをみて大興奮したのは言うまでもありません。

 今回はフランクフルト在住6年目の筆者がドイツ企業で働き、日々の生活のなかで感じるドイツ人のお国柄と素顔について幾つかお話ししたいと思います。

▽まじめで勤勉な国民性、日本人とドイツ人

 よく耳にするのが、日本人もドイツ人もとても“まじめ”で“勤勉”な国民性であるという評価です。

 ただちょっと違うのは、日独間にある“まじめ”と“勤勉さ”の定義の違いです。ここでいうドイツ人の“、まじめさ”や“勤勉さ”とはあくまで社会や社内の“ルール”に則って行動するということ。労働契約には、給与額はもちろん、有給休暇の日数や禁止事項、退職時のことまで細かく明確に記されています。ドイツ人は基本的に、法律や規則を遵守し、その範囲でしっかりと働きます。

 もちろん、職種や企業にもよりますが、基本的に決められた就業時間を超えて、残業はしませんし、ちょっと具合が悪いだけでも仕事を休みます。例えば労働法で雇用主が、労働者が会社を休む理由やその真偽を問うことは禁止されており、本人が体調不良というのであれば、それを認めるしかありません。つまり「具合が悪いから休む」という個人の“休む権利”を主張することが認められているというわけです。

 その代わり、与えられた仕事はしっかりやるのがドイツ人。出勤をいつもより少し早めたり、休日出勤をすることで、病欠で遅れをとった仕事を自分のペースで最後まできっちりやり遂げます。

 また休憩時間も同じです。例えば、弊社ではフライト時間に応じ、労働法により、フライト中、ある一定の休憩時間を取らないといけないのですが、少しでも休憩開始時間を過ぎてまでお客様の対応をしていると、上司や同僚に早く休憩に行くよう怒られるくらいです(笑)。

 多少の体調不良をおしてでも、周りの同僚に迷惑をかけないようにと会社に出勤し、残業や休日出勤が当たり前になっている日本人の仕事に対する“責任感”や“勤勉さ”とはまた全然違いますよね。日本の企業での勤務経験のある筆者は、このドイツの“労働法に基づいた勤勉さ”の定義をはじめて聞いた時、まさに目からウロコでした。

▽質実剛健? それともただのケチ?

 皆さんの中にはドイツ人=質実剛健というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか? フランス(お洒落の国)やイタリア(ファッションの国)に隣接しているのに、ドイツ人は基本的に洋服や靴などファッションにはお金をかけません。見た目よりも機能性を重視し、長く使える物を購入する傾向にあり、新しい物に対する執着心があまりありません。

 ファッションに限らず、日常生活においても何かを購入する際や、サービスの契約プランなどを決める際にも、吟味に吟味を重ねて慎重に選びます。商品やサービスの価格の比較をするためのインターネットサイトもあるくらいです。所得の多い少ないに限らず、同じ商品をいかに少しでも安く購入するかということ大切にし、倹約に努める人が多いです。そのため、人々が不用品を持ち寄って売り買いする蚕の市(Flohmarkt)は本当に人気で、週末になると街の至る所で開催されています。筆者もドイツ人の知人と一緒にいったことがありますが、アンティーク商品からガラクタ?とも見えかねない物まで幅広く売られていました。

 またドイツ人には割り勘や、食事をシェアするという観念がありません。イタリアンレストランに行くとよく見かけるのが、複数人が食事を一緒にしていて、1人1枚のピザを注文し、シェアすることなく全て平らげている光景。「自分が頼んでもいない食事や飲み物に対してなぜお金を支払わなければならないのか?」というのが彼らの言い分です。異なる料理を注文し、みんなでシェアするのが当たり前で、割り勘の観念が定着している日本人からすると彼らの考えはなかなか理解できませんよね。ドイツ人の同僚と日本にステイ中、居酒屋にいった暁にはカオスな時間が流れるのはいうまでもありません(涙)。ただ単に倹約家で細かいだけなのか、ただケチなだけなのか、もはやよくわかりません。

▽オープンでダイレクトな国民性

 ドイツ人は本当にダイレクトにはっきりと物を言います。これは上司・部下の関係であっても同じです。何か意見がある場合には恐れず自分の意見をきちんと主張します。仕事中、あまりに大きな声で意見の言い合いをしていたので、口論しているのかとびっくりしたこともあるくらいです。彼らにとってこれは口論ではなくあくまで討論。お互いに意見を明確に伝え合うことで、相手の意見を尊重し、同時に自身の主張も認めてもらう。つまり誤解や遅延なく理解し合うための一つの手段としています。間接的な自己表現に慣れている日本人にとってはなかなか慣れない習慣で、上司や先輩との話し合いとなるとついつい遠慮がちに意見しがちですよね。

 ドイツ社会において、自己主張がしっかりできること=“仕事への熱意や意欲”、“同僚との信頼を高めること”に繋がるとても大切なことなのです。上司や、部下、先輩、後輩といった立場や年代の垣根を超えてなんでも相談・意見交換ができる風通しの良さは筆者も仕事中よく感じますし、そのような平等な立場で働く中で信頼関係築きあげることができるのは素敵なことだと個人的に思います。

▽最後に

 ここまでドイツ人の国民性についてお伝えしてきましたが、皆さんがこれまで抱いていたドイツのイメージと比べてどうですか? ここで全てをお伝えしきれないのが残念なくらい、まだまだ日本とは違ったお国柄やドイツの魅力がドイツにはあります。これからドイツはワインフェストにオクトーバーフェスト、そしてクリスマスマーケットなど活気と賑わいで溢れる行事が盛りだくさんの時期を迎えます。この機会にぜひ皆様もビールやソーセージ以外の新しいドイツの一面を体感しにドイツへお越しください。

【プロフィル】清水陽子

 しみず・ようこ 福井県出身。関西外国語大学 英米語学科卒業後、4年半の銀行勤務を経てドイツの航空会社に既卒入社。入社後に習得し始めたドイツ語のさらなるブラッシュアップに日々励んでいる。趣味はヨガとロードバイク。オフはドイツ人の同僚と食事に出かけたりカフェ巡りをするなどアクティブに活動している。

 このコーナーはエアソルに登録している外資系CAが持ち回りで担当します。現役CAだからこそ知る、本当は教えたくない「ここだけ」の話を毎回お届けしますので、お楽しみに。内容は随時更新します。エアソルはPR、商品開発、通訳、現地リサーチ、ライター業務等、現役CAの特性を活かせるお仕事を副業としてご紹介しています。

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