《外貨の活用》(5)〈商品選択のポイント〉不確実性の時代に選択肢

投資講座

 いよいよ連載も終盤に差し掛かってきました。今回は投資商品の選び方についていくつかのデータを示しながらご説明します。ポイントは「不確実性の時代には手段・時間・通貨の分散を含めた幅広い選択肢を利用すること」です。(SMBC信託銀行 橋詰貴志)

 金融機関の商品説明資料で次のような文言を見たことはありませんか。

 「2%の物価上昇を目指す日銀の金融緩和政策により、将来的には物価上昇(インフレ)が見込まれます。大切な資産をインフレから守るために、インフレに備え資産運用をしましょう」

 これは言っていることは正しいのですが、私が小さいころからデフレが続いていますので、「将来のインフレ」を実感することが難しく、それよりはリーマンショック以降、毎年のように起こる危機とテロなど地政学による「目の前の不確実性」にどう備えるかが実感的には急務だと思っていました。世代によっては物価は上がるものという考えの方も多くいます。育った時代によって将来に対する捉え方が違うのは非常に面白いものです。

手段・時間・通貨の分散

 インフレにせよデフレにせよ、確かなのは不確実性の高い時代に突入したということでしょう。その中で、数ある金融商品の中から何を選んだらいいか明確に答えられる人は少ないと思います。ここで私は読者の皆様に「不確実性の時代には、手段・時間・通貨の分散を含めた幅広い選択肢を利用すること」を基本セオリーとしてご提案したいと思います。

 まずは「手段の分散」を行います。代表的には、保険(守り)、投信・株式等(攻め)、債券(中間)が手段の対象になるでしょう。最近では商品間の垣根が低くなっており、保険にも攻めの機能があったり、投信にも守りの機能があったりしますが、まずは守りの部分として、医療・年金(長生き)・介護、死亡、相続などのリスクに対し準備したいものを優先に考えるのが良いと思います。

 ここでは個別商品の詳細は省きますが、高額療養費制度や障害・遺族・老齢年金、介護保険制度などすでに公的な制度が用意されていますので、カバーできていないリスクとご自身の予算に合わせて保険会社や銀行、証券会社といった金融機関などにご相談されるとよいでしょう。

 次に「通貨の分散」と「時間の分散」を取り入れます。たとえば保険を検討する際に、円建て保険よりも利回りの高い外貨建て保険を一部もつことで、効率的な資産運用を実現できる可能性があります(前回までの連載をご参考に)。さらに平準払(毎月や毎年など定期的に保険料を支払う)保険であれば、今は大きな資金はなくても、給料収入などのキャッシュフローの中から保険料を支払っていくことで、大きな保障を準備することができます。また保険料が外貨建ての場合、数十年にわたって支払いますので為替リスクを分散できます。

守りながらも攻める

 守りを固めたら次は攻めを考えます。ここでも外貨建ては有効です。例えば債券は基本的には満期時に元本が戻ってくる商品なので、守りを固めながら攻める商品として魅力がありますが、円建てでは相対的に金利が低く、その効果が発揮されにくくなります。

 したがって外貨建てを選択肢とすることで効率的な攻めができると言えるでしょう。債券は原則として国債が基準金利となりますから、その分高い金利で運用することができるのです。

 守りながら攻めの話をしてきましたが、それでも歴史を見る限り、中長期的には株式や投資信託による攻めが必要になると思います。インフレへの対応はもちろん、外貨建て投信を持つことで通貨価値の変動を抑えながら効率的な運用が期待できるからです。

 バランス型ファンドを米ドルと円建てで投資したと仮定します。すると、米ドル建ての方が長期的に少ないリスク(標準偏差)で高いリターン(収益率)を上げていることがわかります。

 安定性も外貨建て投信の特徴といえます。各種データから、運用資産残高の変動率 を計算すると、国内籍公募投信全体が10.1%であるのに対し、外国籍投信全体(米ドル建て)は5.7%であり、相対的に安定していることがわかります。

 また、国内籍公募投信全体の資産残高は、国内の主要指標であるTOPIXや円の対米ドル相場との相関が高いことから、これらの市場環境に左右されやすいといえます。一方、外国籍投信(米ドル建て)は国内指標との相関が低く、インデックスにも左右されにくいことが読み取れます。

 つまり、外貨建て投信に投資することによって、国内要因にさらされず、海外の高いリターンを享受できると言えるでしょう。

不確実性の時代に、世界の成長率を捉えた運用を目指すには

 国際通貨基金(IMF)は4月に公表した世界経済見通しで、2017年の世界経済の成長率の予想を3.5%、18年を3.6%としています。

 それでは、こうした世界の成長をできる限り的確に掴んだ運用を目指すには、どのようにしたらよいでしょうか。

 中長期的に日本株式ファンドだけでなく将来の世界の成長を“丸ごと”取り込むにはグローバル株式が有効であると考えられます。株価は長期的には企業業績との相関係数が高いといわれています。

 グローバル株式ファンドは、世界の経済成長に加えて、こうした企業の努力による利益成長をも取り込んでいくことができるのです。ただ、注意すべき点として、ファンドの運用先が一時的なテーマ性のものや、特定の国やセクターなどに偏っていると投資リターンにも偏りが出やすくなります。そこで、広い意味でバランスが取れたグローバル株式を投資先とするファンドを選ぶ必要があります。

 不確実性の高い時代には手段・時間・通貨の分散を含めた幅広い選択肢を用意しておく必要があることをご紹介しました。ぜひ、こうした手法があることを知っておいていただければと思います。しかし、ファンドの運用先や方法、期間がどのようになっているかを読者の皆様自身が検討・判断するのは非常に難しいでしょう。そのような場合は、十分なコンサルテーションを行い、それだけのアドバイスができる専門家を備えた金融機関にご相談されることをお勧めいたします。

(※投資講座は随時更新。次回も「外貨の活用」をテーマに掲載します)

【プロフィル】橋詰貴志(はしづめ・たかし)

SMBC信託銀行商品企画部
バイスプレジデント
早稲田大学政治経済学部卒業。主に国内大手信託銀行にてグローバル株式シニアファンドマネージャーを勤める。ニューヨーク駐在時には米運用会社を拠点に欧米株式の企業分析も行う。シティバンク入行後投資信託の商品企画・開発業務を担当。現在はSMBC信託銀行プロダクト部門におけるリスク商品チームヘッド。日本証券アナリスト協会検定会員

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